「白色の」 クルガン&シード


自室でもないのに、あれほどくつろげるのは、有る意味才能と言っていいのかもしれない。
そう、銀髪の将軍は考えていた。
自分は今、執務机について、書類を書いている。
同僚のシードは先ほど勝手に押しかけてきて、来客用のソファーで「斜め」になっている。
斜めというのは、横になっているわけではないが、かといってきちんと腰掛けているわけでも ないという、微妙な座り方だ。
はっきり言って失礼にもほどがあるが、シードのマナーを一から正しているほど、クルガンは 暇ではなかった。

やっと仕事熱心な彼も休憩しようと思ったらしく、クルガンが席を立つと、
「俺が飲み物淹れてやるよ!」とシードは言って、早々と、簡易キッチンの有る続きの間に 繋がる扉を、開けて出ていった。
何か飲みたかったのなら、勝手に探せばよかったものを。
そうクルガンは思ったが、シードが張り切っているのは、別に彼自身が喉が渇いていたからではない。

数分後にカップを2つ持ってシードが戻ってきたので、クルガンはその恩恵をありがたく受ける ことにした。香りからして、コーヒーがはいっているのは間違いない。
だがカップの中身は、1つがシード用のミルク入りのコーヒーで、
もう1つ、クルガン用に差し出された飲み物は、ホットミルクだった。

「・・・・・・・。」

銀髪の知将は考えていた。はじめ、コーヒーミルクの量を間違えて、白いコーヒーになって しまったのかと思った。しかしこれは、明らかにミルクである。100パーセント、ミルクだ。 混じりっけ無しのミルクだ。その証拠に、ホットミルクにつきものの、薄い膜が張っている ではないか。
何故シード自身はコーヒーを飲んでいるのに、私の目の前にはホットミルクが有るのだろう、と クルガンは悩んだ。なまじ頭が良いと、何でもかんでも難しく考えてしまう。答えはとても、 簡単なのに。

ミルクの入ったカップを片手に、眉間に皺を寄せている同僚に向かって、シードは言った。
「お前コーヒーばっか飲んでて、胃が悪ぃんだろ?たまにはそれ飲んどけって。」
どうやらこれは、彼なりの気遣いらしい。珍しいことをするものだから、逆に驚いたではないか。 内心そう思いつつ、小さくため息を漏らしながらも、クルガンはその乳白色のドリンクを飲み干した。

「ホットミルクなど・・・幼少期以来だ。」
「そうか?懐かしいだろ、♪ミルク〜はママの味〜 ってな。」
「・・・・そう、言うのか?」

END


カプの彼らも好きですが、僚友の彼らも好きです。
シードが歌ってるのは、もちろんミ○キーですよ(^^)   2003.8.28