「メーター」


とんでもないものが出来てしまった、と思ったのは、守護聖のうちの 何人かだ。
ある人は、その機械の存在の面白さにうけ、
またある人は、その機械の原理とか、動力とか、そんなことばかり気にしている。

「いいじゃん、面白いじゃない、そういうの〜☆」
「あ〜、非常に興味深いものですね〜。」

彼らがそういうのは、特に仲の悪い人物がいないからだ。

人間、・・・というか、該当するのは数人しかいないが・・・、
非常に仲の良くない相手がおり、そしてその相手と、
普段は反発してばかりだが、実は歩み寄りたいのだと思っている「彼」。
そんなもので相手との、「仲の悪さを再認識」されては、たまったもんじゃなかった。

しかし無垢な相手は来た。赤い髪の、火龍族の少年。
大好きな、2人の少女にそのプレゼントを渡す前に、しっかりと テスト計測を行ってから、使ってもらおうと思っているのである。

で、該当の人物はどうしたかというと、逃げた。
戦いと勝利の象徴であろうが構わず、逃げたのだ。
他の、いわゆる「仲険悪コンビ」は、ああだこうだと言いつつも、
メルの測定をしっかり受けたのに。

「っんなモンで、分かるわけねぇだろ!」と叫ぶゼフェルと、
「そんな言い方はよくないだろ!」と、いつも通りそれをたしなめる、 ランディ。
「あ〜、思ったより数は高いのですね〜。良いことです、うんうん。」
と、ルヴァはにこにこしている。
その横で、女王の両翼の、2人の年長守護聖は、お互い
「ふっ ふっ ふ」という怪しい笑い声を浮かべていたので、
マルセルは、「オリヴィエ様ぁ〜。こわいです〜!!」と言っていた。

さて、(ただ1人を除いて)皆に優しく接する水の守護聖リュミエールは、 占い師メルの話を聞いて、こう言ったのだ。

「オスカーは何故、逃げたのでしょうね。」

測ってみればよろしいでしょうに、と彼はつぶやいた。
そんな言葉を聞いて、どちらの友人でもある夢の守護聖は、言った。

「リュミエール、アンタは気になんないんだね・・・。」
「ええ、そうですが。」

きっぱり、リュミエールは答えた。
アイツも報われないね〜、とオリヴィエは天を見上げてからひとりごちて、 くるりと計測器を持っているメルの方に向きなおし、メルに尋ねた。

「ねぇ、その機械ってさぁ、倍率って下げらんないの?」

だってさ〜、1ミリも振れなかったら、かわいそうじゃん、と、 オリヴィエは続ける。できるよ〜、とメルは告げて、下の方についている、 目盛を少し回した。

「これで大丈夫。たとえ親密度が1しかなくても、ちゃんと 振れるよ〜。」

メルは楽しそうだ。可愛い顔してキツイこと言うねぇ、と聖地一の常識人、オリヴィエは 思っていた。
しかし、結果を見たときのオスカーの顔を想像すると、面白くてたまらなかったので、
オリヴィエは、ヒールのある靴でダッシュして、悪友オスカーを捕まえてくるのである。



「嫌だ嫌だ嫌だー!」

往生際の悪い男である。注射を嫌がっている子供じゃあるまいし、 何をそんなに叫んでるのよ、とオリヴィエは言った。
その様子を、炎の守護聖と同期の相手は、ふふ、と笑って、見つめていた。

リュミエールがごく普通の顔をしているので、オスカーは相手に問う。
「リュミエール、お前は嫌じゃないのか?!」
「嫌?いいえ、全く。」

こういうところも、わたくしたちは意見が合わないのですね、
とリュミエールは、コロコロ笑っている。がっくりしているオスカー。
何だかんだいいながら、オスカーは結局、リュミエールとの親密度を 測られてしまった。

+++++++10+++++++++20

「・・・・・・・・に・・・・・・。」
メルは正直、驚いているようだ。流石に「2」だとは思っていなかったらしい。
それに対しルヴァは、測定結果を見て、言った。

「あ〜、意外と高かったですね〜。」
「本当だねェ。2あって、よかったじゃんオスカー☆」

オリヴィエも、ひとのことだと思って、言いたい放題だ。
誰もフォローしてくれる人がいないので、オスカー自身も
「2有ったのだから、良かったのかもしれない」と考えることにした。
当事者の片割れであるリュミエールは、相変わらずふふふと笑っている。

守護聖の間に嵐を起こすだけ起こしておいて、満足したのかメルは、
「ありがとうございましたっ!」とぺコと一つお辞儀をして、この部屋から 出ていった。
非常に疲労感を感じている人間が、何人か。


「エルンストさ〜ん。ばっちりだったよ〜。」とメルは言いながら、 エルンストの元へ帰ってきた。
どうでしたか、と研究員は軽く聞き、「うん、楽しかった!」と占い師は、 答えではない答えをしている。
機械を少年から受け取ってエルンストは、まだ試作品であるそれに、不備が ないかどうか調べた。

「・・・この、倍率変更のスイッチは、使いましたか?」とエルンスト。
「うん、使ったよ♪」とメル。

「1目盛が100になるよう、倍率が上がっていますが、これで測定が・・・?」
と主任研究員。それを聞いて占い師の少年は目を丸くしてから、 「えへ、メル間違えちゃった^^どうしよう、オスカー様に教えておいた方がいいかな〜?」
と答えた。


後日、火龍族の少年は、ご丁寧にもその事実を炎の守護聖の元まで伝えにいって、
それを聞いたオスカーは、嬉しくて、 メートルをあげたさけによう とか
いう噂だ。

**END**

ぷろび2周年おめでとうございます