もしも財政難だったら



青春学園は、テニスが盛んな学校だ。
だから当然、テニス部には十分な部費が支給されている。
が、「もし、ほとんど部費が支給されない苦しい状態だったら」と。
そう、不二は考えた。・・・・ヒマだったので。

***

「財政難・・・ッスか。」
そう、桃城は言った。不二が思いついたのは部活中だったのだが、 せっかくなので、練習が終わった更衣室で、話題を持ちかけてみたのだ。

「ボール1つ買うのにも苦労するんじゃ、ロクに練習も出来ないですよね〜。」
そういう彼の言葉。それを聞いて、河村は、
「そう考えると、俺たちは恵まれてるんだよな、感謝しなくちゃな。」
と、言った。
横から、話を聞いていた菊丸が、口を挟む。
「皆でバイトして、部費稼がなきゃならないにゃ〜。」
すると、黙っていた手塚が、「バイトは禁止されているぞ。」と真面目に答える。

「あはは、もしもの話だよ。」と不二は言って、笑いながら手塚に告げた。
ドアが開いて、少し遅れて帰ってきた乾が入ってきたので、不二は急に思いついて、 言う。

「乾特製の”汁”を、他の部に売り出したら、儲かるかも。」

すると部員のほとんどが「売れない(ッス)よ」と答えた。
不二は、罰ゲーム(罰商品?)として用意されている、乾の作った”ジュース”が、 ひどい味だということを分かってないので、単なる「健康的な飲み物」だと 思っている。
・・・コイツは天然か?と数人が、思った。

常識人の大石が、ハハ、と引きつった笑いをしてから、言った。
「不二、儲けを考えるのだったら、もっと違う”グッズ”を考えないと、駄目だよ。」
後輩たちは、彼の「相手の意見をまるっきり否定せずに、次の話題に持っていく」という、 優しい心遣いに感動していた。
すると不二は、「その言葉」通りに、違うグッズを考えた。不二は言う。

「乾のかけてるのと同じ”型”の、眼鏡とか。」

どうして不二は、乾のネタから離れられないんだろう、と誰もが内心思う。
もしかして・・・と数人が「後」のことを考えたが、彼の狙いは違うところに あるのだと、すぐに気づく。
不二は、言った。

「手塚にかけさせたら、宣伝効果は抜群だよね。」

そういって、ケラケラ不二は笑っている。「成績あがりそう」だと。
確かに、そんなものが登場(発売?)したら、
その「ごりやく」で、テストの成績が伸びるものより、
精神が安定しなくて、困る人間の方が多いと思うのだが。(テニス部の大半)
別に、乾や手塚は眼鏡をかけているからテストの点が良いわけではない。

固まっている皆をよそに、ひとり靴の紐を直していた越前は、
ふいに、言った。

「不二センパイ、この部が財政難になったら、
センパイが、全校生徒の前で、
”部にお金が無くて困ってるんだ、カンパしてっ”
って、ニッコリ言えば、 速攻、解決ッスよ。」

それは至極妥当な案だ。


END



不二は、乾と手塚をからかうのが趣味なのか?(笑)