新入生

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+++「07:半熟」が未読でしたら、そちらから先にご覧下さい。+++

〜ドクターリッテルの、お悩み相談劇場〜

※リッテルは精神科医ではありませんが、悩み多き憲兵たちを救う為、
悩み相談を引き受けることになりました。


リッテル「次の方、どうぞ。」
???「よろしく頼む。」
リッテル(あははは・・・、口調がまるっきり”隊長”じゃないか。
しかも、本人もそれを隠そうとしていない・・・。)
「えー、私の席からは(中略)・・・秘密は厳守します。」
???「そうか、ありがとう。」

リッテル「はい。それでは、貴方のお悩みというのは何ですか?」
???「困っているんだ。」
リッテル「困る?具体的には、どう?」
???「第2小隊に、新入隊員が入っただろう。」
リッテル「えぇ、そのように聞いています。」
???「そのな、新入隊員のひとりに・・・・迫られた。
リッテル「はぁっ!?せ、迫られたって・・・・!な、何かされたんですか!?
大丈夫ですかっ!」
???「落ち着いて下さい、ドクター。(←棒読み)」
リッテル「は、は、はい。失礼しました。
その、迫られたという経緯を、ひとつ詳しく・・・。」
???(袖を差し出して)「袖のボタンを引きちぎられたのだが、そこから
見えるか?あ、いや、別に力業に出られたわけじゃない。
私がはっきりしない態度をとっていたから、我慢しきれなくなったらしい。
腕を掴まれただけだ。」
リッテル「腕だけですか?本当にっ?!」
???「心配性だな、ドクターは。」
リッテル「貴方は、”大したこと”でも”大したことなさそう”におっしゃる
癖があるから、鵜呑みに出来ないんですよ。」
???「そういった個人を特定するような発言は、ふさわしくないと思います。(←棒読み)」
リッテル「あ、はい。そうでした。失礼しました。
それで、その新入隊員とのやりとりを、詳しく・・・。」
???「その前にひとつ、ドクターに一般論を聞いてみたいのだが。」
リッテル「はい?一般論とは?」
???「男同士が仲良くしている隊に派遣されて、その同類になるのが嫌で、
手近にいた”一応、異性”の相手にアタックするというのは、生物学上仕方のない行動だろうか?」

リッテル「・・・・すみません、話が飲み込めないのですが。」
???「あぁ、第2小隊の噂は聞いたことがなかったか?
あそこはな、隊内でつるんでいる奴らが多いんだ。衆道というヤツか?
まぁ、ここテルミネは、同性結婚が認められている地域なのだから、別にそれ自体に
文句を言うつもりは無いのだがな。
新入隊員クンは、第2小隊のそれが気に入らなかったらしい。
だから、他の隊まで手を伸ばしたのだな。といっても男でない者は、他の隊にも
私しか居ないが。男とやるくらいなら、色気がなくても女の方がいいと思ったらしい。
おや、すまない。発言が少々下品だった。
ともかく私はそういう理由で、名も知らなかった新入隊員に、迫られた。
一応追い返しはしたが、これからは、どうしたらいい。
ちなみに、彼と付き合う気はない。」

最後の言葉に、「それは分かっていますよ。」とリッテルは素で答えた。
青年は悩んだあげく・・・・本当に悩んだ・・・・ひとつの答えを与えた。
「隊ごとに、そんな文化の違いがあったなんて、知らなかったですよ。
これからは他の隊の動向も気にしていくこととします。
で、今回のその件につきましては・・・・。」

・・・

リッテルはその後、ウィルヘルムを捕まえて、こう聞いた。
「すまないウィルヘルム。君の奥方に頼んで、奥方の同僚仲間・・・軍看護婦の
方たちだが・・・を、合コンに誘うことは出来るだろうか?」
「は?合コン、ですか?」
ウィルヘルムは目を丸くしている。彼は続けて尋ねた。
「合コンって・・・副隊長はそういうのがお好きで?」
「いや、私は出ないのだけどね。」
首を振って、リッテルは否定をした。

かくして後日、軍看護婦&若い憲兵の合同コンパ(主催は第3小隊)がとり行われ、
男所帯に飽き飽きしていた青年たちも、彼女やら何やらをゲットできた。
例の新入隊員クンも「うまくいった」らしいので、コンパの主催者リッテルは、
ほっと胸をなで下ろしていた。
コーヒーを飲みながらリッテルは思うのだが、
(隊長に迫ったという彼だってきっと、異性であれば誰でもって訳じゃなく、
あのひとの魅力に気づいて”惚れた”んだ。
でも、出そうなクイは今から叩いておいたほうがいい。)

私も、明確な行動に出られるわけはないからなぁ、と、彼は心の中でひとりごちた。

<了>

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