水たまり

***

秋の長雨。

テーブルに肘をついて、ザギは外を眺めている。
窓から見える景色は、雨天だ。
昨日も、おとといも、そのまた前の日も雨だった。
おそらく明日も雨だろう。

「つまんなーい」と小さく声に出して、呟いてみた。
別に、同室にいる男が、遊んでくれないから文句を
言っているわけではない。
ただ、あまりにも雨が続くので、退屈でしょうがないから
口に出しただけで。
黙々と縫い物をしていたソウマは、その声を聞いて、
話をし始めた。ザギの暇つぶしくらいには、なるかと思って。


「なぁザギ。この国の”外”ではな、道がこう、
土じゃねぇんだってよ。」
竜族の少年は、振り返って相手のほうを見た。そして尋ねる。
「土じゃない、って?何?全部の道が砂利なの?」
「いいや。もっと固くてしっかりした素材で、補整して
あるんだそうだ。」

へー、じゃあいいじゃん、とザギは呟いた。
土や砂利道を、馬車が苦労して渡っている光景を、目にする。
きちんとした道ならば、そういったものが通るのも楽だろう。
それに、土道は雨が降ると、ドロドロになって歩きづらい。
だからザギは、雨天が好きではないのだ。
歩きやすくて良さそうだなーとザギは、見たことのない土瀝青どれきせいの道に、想いをはせた。

「でもな、良いことばっかじゃねぇんだぞ。」
ソウマがそう言ったので、ザギは驚いて相手を見返した。
茶色の髪の男は呟く。

「固い資材で道を作ると、大地が雨を吸収しなくなるから、
水害に弱くなる。
あぁやって、土道に水が溜まってんのも、意味があることなんだよ。」

ソウマは、窓から外の景色を指さした。
少年はそうかと素直に納得して、今度は楽しげに、 雨の降る様子を眺めた。


よその国は、どんな世界だろう
いつか、貴方と行けたらいいな
夢のような所じゃなくても
一緒なら、きっと楽しいから

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