世界を変える方法
***
ソウマは自分の部屋のベッドに横になって、ふいに
天に向けて腕を伸ばしてみた。
昔も、こういうポーズをしたような気がする。
その時、寝そべっていたのは草原の上だったが。
大昔、自分が少年だった頃に、
どうしても叶えたい夢があって。
そして、それはとても困難だったから、
雲をつかむような話だと言われたから。
だから、その慣用句の通り、「雲をつかもう」と、
天に向かって腕を伸ばしてみて、
空の遠さに、唖然とした。
思わず、カラ笑いがもれた。
愛するひとを、助けたかった。
罪びととして、魔方陣の中に囚われている、竜族の女性。
彼女を、自由の身にしたかった。
自分は彼女を心から愛していたけれど、
向こうはこちらを利用していただけで。
それに気づいたのは、魔方陣を「切った」あとだった。
非力な少年に、力を与えたのは”神器”。
城に美術品として格納されていた、創世王時代の魔法品。
少年の世界を変えるには、十分すぎる出来事だった。
その後、暴走する竜=彼女=を止めるため、
ソウマは同じ神器で愛する人を刺し殺し、
竜斬士としてさ迷い歩く結果になるのだが、
本人はその過去を、憂いてはいない。
男は手を下げて、そんなもんだろ、と意味の無い呟きを放った。
昔は昔、今は今だと、起き上がって首を振って思う。
急にバタバタと騒がしい音がしたと思ったら、
バーンと部屋の扉が開いて、
灰色の髪の図体のでかいコドモと、
同じくらい背の大きい、亜麻色の髪の女性。
そしてギャーギャー、同時に喋る。
「お前ら、ふたり同時に喋ったら、聞き取れねぇっつーの。」
ソウマはそう言い、呆れながらも、その後笑った。
何が自分の人生を変えるか、分かったもんじゃねぇ。
竜斬士にならなけりゃ、こいつら2人とも出会わなかったわけだし?
静か過ぎる家庭よりは、まぁいいんじゃねぇの、と
茶色の髪の男は内心呟いた。
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