仔犬のワルツ


「おまえが俺を抱こうって言うのか?」
オスカーは冗談だろう?と、鼻で笑った。
「冗談かどうかは…」
リュミエールはそう言うと、右手で、壁際に立つオスカーの手首をいきなりぐい、と掴んだ。
「……マジかよ。」
「わたくしはそういう類の冗談は申しませんが?」
オスカーはリュミエールの手を振り解こうとしたが、何処をどう掴まれたものか、まるで自由が利かない。
「……その手を放せ。」
「…いやです。」
そういうと、リュミエールはあいている左手で、オスカーの顎をついと寄せ、その唇を奪った。オスカーの唇を割って、リュミエールの舌が入って来る。
「……ん……ふっ……ん……」
リュミエールの舌は、まるで生き物のようにオスカーの口の中を這い回り、オスカーはそうしているうち、ついに思わず快感を覚えていた。
耐え切れずがくりと力を抜いたオスカーを、顎を掴む指の力だけで支えながら、いつの間にかその右手はオスカーの手首を掴むのをやめ、股間に伸びている。
「………あ、ふ……っ……」
オスカーが呻き声を洩らす。いつしか抵抗をやめていた彼は、無意識のうちにリュミエールの愛撫に小さく腰を動かしていた。
「う……あ、リュミ……エールっ…」
「……気持ち、いいですか…?」
リュミエールの声は、飽くまでも優しい。オスカーはまったくその声に逆らえない自分に気がついていた。
「……い…いい……は……ぅ…んん…」
オスカーのアイスブルーの瞳はいつの間にか潤みきって半分閉じられ、虚空を見ているかのようである。それを見たリュミエールはにっこりと笑って言う。
「……感じやすいのですね、オスカー。あなたってとっても可愛い方だったのですね。ふふふ…もうこんなに、大きくなって…」
リュミエールは既にオスカーのズボンの前を開け、その下のものを愛撫している。
「はっ……あ、ああ……も……ぅ…い……」
「なんですか?」
「…………や……」
「や……?」
「……やめて…くれ……もう……」
「わかりました。」
リュミエールはそう言うと、オスカーを愛撫する手をぴたっと止め、そこから手を放した。オスカーの体が、支えを失ってがくっと落ちる。
「うあ…………っっ」
オスカーはその場に尻餅を付く格好になり、股間の熱は、行き場を失ってびくびくと震えた。
「あ……ああ……」
「どうなさいました?やめてくれとおっしゃるからやめました。それでいいのではないのですか、オスカー?」
「……リュミ……エール…、おまえ……」
「どうなさったのですか?…もしかして、もっと続けて欲しかったのですか?」
「………」
オスカーは、縋るような瞳でリュミエールを見つめている。瞳には涙が滲み、リュミエールは、そんなオスカーを心底可愛らしい、と思った。
そう、まるで自分の恋人の………




「セイラン?」
「……あれ、いらしたんですか?リュミエールさま。」
セイランは、ペンを持つ手を止めて声のする方に振り返る。
「……あなたは、お話も書かれるのですか?」
「はい、最近ちょっと、手慰みに。」
セイランは、悪びれもせず、そう言った。
「………オスカー、ですか。」
「おや?もう読まれたんですか?お早いですね。」
「……あなたは、私にこういうことをして欲しいと思ってらっしゃるのですか?」
「でも、リュミエールさま、いつかはオスカーを泣かせてみたいっておっしゃってたじゃないですか。僕はちょっとそれをシミュレーションしてみただけですよ。」
「わたくしが、そんなことを?」
「あれ?覚えてらっしゃらないんですか?」
「……そう言えば……そんなことを…言った……かも…」
リュミエールは思わず頬を赤らめた。セイランは嬉しそうにそれを見つめている。
「……実行してご覧になったらいかがですか?」
「………セイラン??……あ、あなたはそれでいいのですか?」
「構いませんよ。僕も興味があります。」
リュミエールは目をぱちくりする。セイランは飽くまでも嬉しそうだ。
「……でも、どうやって?」
「……それはこれから考えましょう。」
「あなたはどうなさるのですか?……それに、本当にこのお話のとおりには……」
「行かない、とおっしゃるのですか?…でも、あの方は結構感じやすいですよ。僕も何度か御返しして差し上げましたもの、ふふ。」
「…セイラン……ι」
「僕は物陰から覗こうかな。それとも、乱入して3Pって言うのも楽しいですね。」
「………」
リュミエールは困ったような顔をしながらセイランを睨んでいる。
「まずはベッドで話し合おうかな……って思ったけど、…」
「どうなさるのですか?」
「……そろそろ夜も更けた。どうです?これからふたりでオスカーさまを襲うって言うのは。ちょっと楽しそうでしょう?」
「……セイラン?」
「…はい、リュミエールさま。」
「……オスカーは、本当にこうなりますか?」
セイランは、にっこりと笑って言った。
「あなたのテクニックなら保証しますよ、リュミエールさま?」
リュミエールもついににっこりと笑う。
二人は顔を見合わせて笑った……




まるで自分の恋人のあの詩人のようだ、と彼は思う。
自分の足元で哀願の瞳を向けるオスカーを見て、確かにリュミエールは胸のつかえが下りた気がした。
「ご自分でなさいませ。」
リュミエールは、なんかおかしな口調になってしまったな、と思う。カーテンの陰でこの光景を見ているはずのシナリオライターを意識したためかもしれない。
「……リュミ……ああ…」
オスカーの瞳からついに涙が零れた。
「ふふ、可愛い人。わかりました、あなたが本当にして欲しい事をして差し上げましょうね。」
そういうと、リュミエールは上半身を屈め、オスカーを二本の腕でひょい、と抱き上げた。オスカーの頬が思わず紅潮する。リュミエールはそれにはお構いなしに、オスカーを抱いたままソファの前に行き、彼をゆっくりそこに横たえた。そして軽く唇にキスをして、もう十分に濡れたそこを探り、ただひとつの穴を探し出す。
「……うっ……」
「……力を抜いて…、オスカー。」
「は……ぁっ……」
「痛いでしょう?……でもすぐ気持ちよくなりますよ。」
リュミエールは指を差し入れながら前を弄ぶ。本当にセイランの言ったとおり、オスカーは感じやすい。そしていつの間にかオスカーは腰を動かしていた。
「可愛いオスカー。そろそろ、イかせて差し上げましょうね。」
リュミエールの手に力が篭る。
「あ、ああっっ……ひ、う……っ」
オスカーが、そんな悲鳴のような声を上げてついに達するまでに、あまり時間はかからなかった。
「……リュミエール……」
「ふふ、オスカー。とても素敵ですよ。」
「おまえ……」
「今度は、もっと楽しいことをしましょうね。ねえ、あなたもそう思うでしょう、セイラン?」
その声を合図に、分厚いオスカーの私室のカーテンの陰から細身の青年が姿を現す。
「ふふ、オスカーさま。本当に素敵ですよ。僕、すっかり感じてしまいました。」
オスカーはアイスブルーの瞳を大きく見開いた。




次の日、オスカーが執務を休んだのは言うまでもない。




END

なんだかわけのわからないものですみません。
一応、水炎ということなんですけど(^^ゞ
……最初は、これはセイランの書いたお話でした、
チャンチャン♪で、終わる予定だったんですけどね。
どんなもんでしょうか(^^ゞ
ドキドキ。


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