「BAe S-5B」

 火星環境改善計画−通称Blue Mars Projecut−により、僅か25年という期間で海を有するようになった火星。
 次の25年で大気中の酸素濃度を4割に増やし、その次の25年で成層圏にオゾン層を形成する。最後の25年で緑化計画が始まる・・・。
 青い海と赤い大陸が対称を描く火星を望みながら、ふと学校で習った事が思い浮かばれた。しかし次の瞬間には、冷静なパイロットに戻っている。
「S-5Bよりコントロールへ。重力ターン終了まで5秒、4秒、3秒、2秒、1秒、加速コースに乗った」
「コントロールよりS-5Bへ。了解。コースのクリアを確認した。加速開始」
「S-5Bよりコントロールへ。了解。プロペラント投棄、加速開始」
「コントロールよりS-5Bへ。MC.172は28秒後方だ。やったな、優勝はほぼ確定だ」
 不要となったプロペラントタンクを投棄し、静かに加速を開始する機体。エンジンの余熱を受け取り、放熱フィンが赤く輝く。
 ファイナルラップ。2万3千kmの彼方には、ゴールであるデイモスが、鈍い光を放っている。


 真魚さんの運営なさっている「MATZ」の10万ヒット記念としてお送りさせてもらったイラストです。真魚さんの「東風」に始まる火星開拓時代の描写に触発されて描いたものです。この時代、シュナイダーカップが復活しているとのメモに、私の脳細胞の一部がえらく刺激を受けたようで、あっという間にBlueMarsProjectが誕生。青き火星をバックに飛行する宇宙船という構図が出来上がった訳です。
 久々に描いたSFチックメカだけに、なにやらリハビリ不足が否めませんが、バックの宇宙とか、機首のスラスターとか、結構気に入っております。


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