「海拉爾・1945夏」


 1945年8月9日。ソ連軍は堰を打って、満州に攻め込んできた。
兵力・装備・志気で上回るソ連軍は、国境の守備隊と交戦するや、瞬く間にそれを粉砕してしまった。その中、唯一互角の勝負ができたのは航空兵力であった。我が軍の装備する疾風・5式戦はソ連軍のYak3・La-5に勝り、局地的制空権の確保に貢献した。そして新型のキ-93「5式襲撃機」の57mm砲は、我が軍の貧弱な対戦車砲に代わり、多くのT-34戦車やJsU戦車を破壊したのである。
 敵軍をして「日本のシュトルモビク」とまで言わしめたキ-93は、日本軍が初めて装備した本格的地上支援機であり、対ソ戦勝利の立て役者であったのだ。(フィクション)



 キ-93襲撃機は、戦車専用攻撃機として設計された機体です。胴体下部に57mm対戦車砲1門、主翼内側プロペラ圏外に20mm機関砲2門を備え、旋回機銃として12.7mm機関砲1門を装備していました。6枚ブレードのプロペラをハ-214Mエンジンの大馬力で回転させ、双発爆撃機並の機体を624km/hの速度で飛翔させる予定でした。が、1号機は試験飛行での損傷を修理中に爆撃にあい焼失、2号機組立途中で終戦となりました。日本初の6枚プロペラによる振動問題や、ハ-214Mエンジンの不調から、当初の性能は望むべくもなく、仮に完成がなっても、制空権を消失した状態でどれだけの活躍ができたのか疑問です。

※海拉爾(ハイラル):中国東北地方の都市。哈爾浜(ハルビン)の北西約600kmに位置する。

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