「薄暮の帰艦」

彼は単機、母艦を目指し飛行していた。
母艦を発した時、彼の周りには12機の彗星と、16機の天山がいた。
その姿は、もうない。
全て敵の戦闘機に、艦船の対空砲火に、たたき落とされてしまった。
燦然たる戦果を求め飛び立った数時間前が、夢のように思える。
あたりは既に朱に染まり、燃料は尽きかけている。
その時彼は、捜していた艦をついに見つけた。
涙がこみ上げてくる。
瑞鶴は、静かに彼を待っていた。

 1944年6月18日から20日、日本海軍最後の空母決戦・マリアナ沖海戦が行われた。日本軍は306機の航空機と、3隻の空母を失い、決定的な敗北を喫した。(一部フィクション)



 ようやく彗星を描きました。すいせいさんからリクエストを頂いたのは、既に2ヶ月以上前だったような・・・。彗星は難しいですね。特に機首のインテイクが。それを嫌って、このアングルにしたのですが、今度は背景とのマッチングが上手くいかない。なんど雲を描き直したことか。それでもイマイチ納得していない一枚です。

 彗星は、13試爆として空技廠で開発された機体で、前面投影面積の小さい液冷エンジンと、翼面積の小さな主翼、そして機体内爆弾倉を採用し、速度性能を重視した爆撃機となりました。機体性能は極めて優れており、最高速度は580km/h、航続距離2389km(一二型)と、世界最高水準の艦上爆撃機となりました。しかしその代償として、あまりに整備が難しく、また生産性も劣悪でした。
 彗星には熱田二一型1200馬力を搭載した一一型、熱田三二型1400馬力を搭載した一二型、エンジンを金星六二型に換装した三三型等のバリエーションがあります。また正式採用前に、二式艦上偵察機としてミッドウェー以降の海戦に投入されています。


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