「夜間飛行」

 夜も更けた時分、ブリストル・マーキュリーエンジンの頼りなげな音がこだまする。今時練習機ですら採用していない羽布張りの主翼が、風に唸る音がかすかに耳に届く。次の瞬間、2トンに満たない小柄な機隊がふわりと舞い上がる。そして、かすかなエンジン音を残して、暗闇へととけ込んでいく。
 しかし私は知っている。この頼りなげなエンジン音でも、波間をさまよう人々の耳には、なんと心強く聞こえることか。
 救難信号を受け取ってから、既に30分が経過している。私は彼らの無事を祈る。神のご加護があらんことを。


 ライサンダーのスパッツには、着陸灯が付いています。それを効果的に使ってみたくて、こんな絵にしました。しかし、Mk2なんて描くものだから、なかなかショートストーリーに苦労しました。ほぼ唯一の活躍の場は、ダイナモ作戦、あのダンケルクの撤退作戦でして、その時の機体はMk1でした。その後北アフリカで観測機や連絡機として使用されましたが、私が描いた背景は、どう見ても北アフリカには見えない(笑)。で、仕方なしにイギリス沿海の海難救助に出撃する一コマ、そういう感じでストーリーを書きました。う〜ん、適当(爆)
 いつもはストーリーが先にあって、それから絵を書くのですが、今回は逆だったので苦労したんですよね(苦笑)。


ウエストランド「ライサンダー」

 本機は、ホーカー・ヘクター直協機の後継機として開発された飛行機です。原型機の初飛行は1936年6月と、ホーカー・ハリケーン、スーパーマリン・スピットファイアらと同世代機になります。金属骨組み羽布張りという前時代的なスタイルをしておりましたが、実用性に富み、偵察、着弾観測、地上攻撃等に活躍しました。流石に1941年ともなると、第一線での任務には不適当となりましたが、後方での、海上救助、標的曳航、連絡等の任務で終戦まで活躍しています。
 本機の特徴は、非常に深く透明部分の多いキャノピーであり、パイロットおよび観測員に、ほぼ全周の視界を与えています。また付け根が細く薄くなる主翼構造も、視界性にの向上に寄与しています。固定脚のスパッツ前縁には着陸灯が、その上には7.7mm機銃が左右各1丁装備されています。またスパッツには爆弾架を取り付けることができ、最大200kgの爆弾を懸吊できました。

参考文献
グリーンアロー出版社 野原茂著 [図解]世界の軍用機史10「イギリス軍用機集1931-1945」
デルタ出版 ミリタリーエアクラフト00/12月号別冊「第2次世界大戦 イギリス軍用機 増補改訂版」
原書房 松崎豊一編著 「第二次世界大戦軍用機ハンドブック ヨーロッパ諸国篇」


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