「ロッテ」
蒼穹の空、白い雲海。
雲のカーテンを突き抜けた先に広がったスペイン・バレンシア地方の美しい空に、リッペルト少尉はしばし任務を忘れ見とれた。3月とは言え地中海の日差しは暖かく、北ドイツ・ハノーバー近郊の寒村に育った彼にとっては、眩しすぎる太陽であった。
フランコ軍が首都マドリードを包囲し、戦争は終わろうとしている。ドイツのスペイン派遣軍「コンドル軍団」の帰国解体も決まっており、スペインの空を飛ぶのもこれが最後になるであろう。少しばかりの感慨の念を感じつつ、彼は操縦桿をひねり帰路についた。
3月27日、フランコ軍がマドリードを制圧し、3年に渡るスペイン内乱が終結した。(一部フィクション)
下絵は4月頭にできていたのに、仕事や遊びが忙しくて、延び延びになっていた絵です。
Bf109シリーズから、もっとも初期の量産型の一つであるB-2型です。この型のデビューはスペイン内乱。よって当時のスペイン派遣軍「コンドル軍団」のカラーで描き上げました。ゲルニカ空襲など忌むべき点が多々あるスペイン内乱およびコンドル軍団ですが、歴史を語る上では外せない事実だけに、あえてこのカラーにしました。
なお上記のリッペルト少尉ですが、実在する人物です。でも彼の乗機カラーが判らなかったため、空想上の人物ということにして下さい。つまり「5●41」のラジオコールも、フィクションです(笑)。
ウォルフガング・リッペルトは、少尉としてコンドル軍団に配属され、スペイン、ポーランド、フランス、バトル・オブ・ブリテン、バルカン、北アフリカと転戦しましたが、1941年11月23日、ハリケーンと相打ちになりイギリスの捕虜となります。パラシュート脱出の際に重傷を負い、それがもとで12月3日に死亡してしまいました。総撃墜数は30機(29機という説もあり)、最終階級は大尉で、イギリス国旗を尻尾につけ、おしりに銃弾をうけるライオンをパーソナルマークにしていました。
メッサーシュミットBf109B-2
Bf109シリーズのはじめての量産タイプであったB-1型は、複葉機張りの固定ピッチの木製プロペラ(シュバルツ製固定ピッチ2枚プロペラ)であり、エンジンパワーを効率よく推進力に変換することができませんでした。そこでこのプロペラを、VDM製金属可変ピッチ2枚プロペラに換装した型がB-2です。エンジンはユンカース・モーターJumo210Dエンジン(680馬力)であり、最大速度450km/hの高速を発揮しました。武装は機首の7.92mm機銃2丁のみであり、今後の火力増強が課題となり、その結果C型が生まれる事となります。
参考文献
グリーンアロー出版社 野原茂著 [図解]世界の軍用機史7「ドイツ空軍軍用機集」
モデルアート社 モデルアート1991年8月号臨時増刊「メッサーシュミットBf109B-E」
大日本絵画 J.スッカツ著 世界の戦闘機エース「メッサーシュミットのエース 北アフリカと地中海の戦い」
大日本絵画 J.ウィール著 世界の戦闘機エース「メッサーシュミットBf109D/Eのエース 1939-1941」
原書房 松崎豊一編著 「第二次世界大戦軍用機ハンドブック ドイツ篇」