「Seafire Mk.V」

 1943年9月4日、地中海。不敗を誇ったドイツ・アフリカ軍団がチュニジアで消滅してから4ヶ月。イギリス第8軍とアメリカ第2軍団は、イタリア本土上陸を果たした。この部隊を支援するため、ジブラルタルを本拠とするイギリス北大西洋艦隊・通称H部隊も出撃していた。空母イラストリアス、戦艦ウォースパイト、バリアント、そして昨年8月に竣工した最新鋭戦艦ハウ。これらの強力な艦隊が、シチリア島北に展開し、サレルノの橋頭堡を支援していた。
 むろんドイツ・イタリア軍も反撃を加えてくる。
 今日もレーダーが敵機影をとらえ、甲板待機中のシーファイアMkVに発艦命令が下る。ロールスロイス・マーリン55エンジンの咆吼を残し、機体が地中海の空へと放たれていく。
 イタリア降伏まで、あと4日。しかし、この時点でそれを予見できる者はいない。(一部フィクション)
 

 はじめての艦船絵。空母から発艦する飛行機が描きたくて、シーファイアMkVにするかBf109T-3(Bf109Gの艦載機バージョン・計画機)にするか、迷った絵でもあります(笑)。掲示板でBf109とスピットファイア、どちらにするか意見を集めたところ、圧倒的多数がスピットを推してくれたので、こうなりました。ちなみに手前の空母はイラストリアス、後ろの艦影は大きいのが戦艦ハウで、小さいのが巡洋艦シェフィールド、の、つもりでした(爆)。しかし、イラストリアスとペアを組ませるなら、巡洋戦艦リナウンと戦艦ウォースパイト、バリアントの方が良かった気分。なにせ、タラント空襲の立役者ですから。しかし、そうすると艦載機はシーグラジエーターとフルマーに・・・・(笑)。


スーパーマリン シーファイアMkV

 高性能の艦上戦闘機を欠いていたイギリス海軍は、空軍の戦闘機を艦載機に改造する事を多用していました。シーファイアもそう言った飛行機で、スピットファイアMkXを艦載機に改造した飛行機でした(MkTb)。絵のMkVは、MkTb・MkUcの発展型で、エンジンをロールスロイス・マーリン55(1455馬力)に換装し、主翼の折り畳み機構を追加したことが大きな違いです。
 シーファイアシリーズは、スピットファイアシリーズの発展と共に高性能化していきましたが、元々が陸上機である故の構造欠陥(艦載機としては悪い前方視界や、トレッドの狭い主脚など)が足かせとなり、最後までイギリス海軍の主力機とはなれませんでした。

参考文献
グリーンアロー出版社 野原茂著 [図解]世界の軍用機史10「イギリス軍用機集1931-1945」
文林堂 世界の傑作機No25「スピットファイア」
海人社 世界の艦船1980/6月号増刊「第2次大戦のイギリス軍艦」
THUNDER BAY PRESS社 Antony Preston著 「THE WORLD'S GREAT AIRCRAFT CARRIERS」
MARITIME BOOKS社 「THE ROYAL NAVY IN FOCUS 1940-49」


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