「Rhubarb」

 1943年5月、北フランス。
 月明かりに照らし出されるレールウェイ。
 その明かりを道しるべに、超低空を駆け抜けて行く戦闘機。
 後にはただ、ネイピア・セイバーUBエンジンの、2200馬力の咆吼だけがこだまする。
 作戦名「ルーバーブ」。
 「颱風」の季節は、まだ始まったばかりである。


 さて、ウチの掲示板でけなされ続けたタイフーンの登場です。
 やれ尻尾がもげるだの、やれエンジンから火を吹くだの、はてはインテイクが格好悪いとか、分厚い主翼が嫌悪感をそそるとか、胴体から垂直尾翼へ至るラインが不格好だとか、カードアだとか、アゴだとか、低空性能だけ良くても高々度性能が皆無なのでヘタレだとか、それは酷い言われようでした。ただ耐えるだけの、涙の日々よ・・・・

 話が逸れました。

 今回はそんなタイフーンが、イギリス空軍内で確固たる地位を築き上げた作戦、「ルーバーブ」を題材に描いてみました。
 ルーバーブの主要目標は機関車。それ故線路沿いを飛ばしてみたわけです。しかし、ちょっと線路のスケールが狂ってしまいましたね。おかげで両脇の森が、灌木程度の高さしかないように見えてしまいます。この点が、今回の反省点。
 なおこのイラストは、諸々の理由により(笑)、「CERAMIC WORLD」を運営なさっているえるもさんにお送りいたものです。


ホーカー・タイフーンMk.IB

 ホーカー・タイフーンは、スピットファイアの後継機として、1937年より開発が始まった機体です。スピットファイアを上回る640km/h以上の速度性能と、20mm機銃6門または7.7mm機銃12丁(!)を搭載する強力な火力とを要求されたため、エンジンには新開発の2000馬力級エンジンを選定する事となりました。このエンジンが、ネイピア社の液冷H型24気筒「セイバー」エンジンです。
 初飛行は1940年2月、部隊配備は1941年9月からでしたが、配備当初は、その稼働率の低さが問題となった機体でもあります。信頼性に欠けるセイバーエンジンは、スリーブバルブの摩耗やピストン破断、潤滑油漏れで、僅か20時間しか回らない始末。そして機体側にも、方向安定性不足、尾部飛散、エンジンからの一酸化炭素の逆流等々、様々な問題が発生します。こうした問題が解決し、実運用上の問題がなくなったのは、部隊配備が始まってから1年以上経過した、1942年後半に入ってからでした。
 戦闘機としてのタイフーンは、高々度能力の不足から、決してスピットファイアを上回る戦闘機とは言えませんでした。しかし、低空でのずば抜けた運動性能、1000lb(450kg)もの武装搭載量、20mm機銃4門の重武装から、戦闘爆撃機として絶大な活躍をしています。特に1942年暮れから1943年半ばまで実施された作戦「ルーバーブ」での活躍が特記されています。
 ルーバーブとは、昼間2機、夜間単機による侵攻攻撃のことで、主に飛行場、列車、トラックなどが目標とされました。この作戦の発案者である第609飛行隊・飛行隊長のビーモンド少佐は、1943年1月から4月までの3ヶ月間に、主に夜間単独出撃による56両もの機関車破壊を記録し、一躍有名となりました。
 タイフーンにはMk.IA/IBのメジャータイプがあります。Mk.IAは7.7mm機銃12丁搭載の型でしたが、火力不足から早々に姿を消し、20mm機銃4門を搭載したMk.IBが主力となりました。Mk.IBには、セイバーIIA(2180馬力)搭載・カードアタイプ(初期型)と、セイバーIIB(2200馬力)搭載・カードアタイプ(後期型)、さらにスライドキャノピーに変更したタイプと、様々なサブタイプがあります。イラスト中のタイフーンは、Mk.IB初期型で、1943年5月頃の第609飛行隊所属のカラーリングとしています。

参考文献
文林堂 世界の傑作機No63「ホーカー・タイフーン/テンペスト」
グリーンアロー出版社 野原茂著 [図解]世界の軍用機史10「イギリス軍用機集1931-1945」


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