Round.18 ブラジルグランプリ
02.Nov.2008 : アウトードロモ・ホセ・カルロス・パーチェ
周回数 : 71周


◇予選グリッド

 予選ポールはフェラーリ・マッサが奪い、逆転タイトルへの執念を見せつけます。2位にはトヨタ・トゥルーリが飛び込むサプライズ。3位にはフェラーリ・ライコネンが入り、5位以上でタイトルが確定するマクラーレン・ハミルトンが4位に入ります。以下5位マクラーレン・コバライネン、6位ルノー・アロンソ、7位トロロッソ・ベッテル、8位BMWザウバー・ハイドフェルド、9位トロロッソ・ブルデー、10位トヨタ・グロックとなります。
 なおホンダ勢は、15位のバリチェロが最高となりました。またウィリアムズ・中嶋は、16位からの巻き返しとなります。

◇決勝

 スタート4分前にまさかのスコールが来ます。一気に雨足が強くなったため、レースは10分間の延期を余儀なくされます。ここで予選13位に終わったBMWザウバー・クビカは、ピットスタートを選びます。
 雨自体は数分で上がりますが、10分間の延期でもコースには水が残った状況となります。そのため各車スタンダード・ウェザータイヤでのスタートとなります。フェラーリ・マッサ、トヨタ・トゥルーリ、フェラーリ・ライコネンの順で、またマクラーレンはハミルトンとコバライネンが並んだ形で1コーナーに入ります。しかし、その後では混乱が発生します。ウィリアムズ・ロズベルグがレッドブル・クルサードをプッシュしてしまい、たまらずクルサードがスピンします。このトラブルにウィリアムズ、中嶋が巻き込まれコースオフ。中嶋は周回に戻れたものの、クルサードはここでレースを終え、15年間の選手生活にピリオドを打ちました。また3コーナーでは、ルノー・ピケが挙動を乱し、スピンを喫しています。
 このクルサードのクラッシュの処理のため、コースにはセフティーカーが入ることとなります。4周目のリスタート、この時点でのオーダーは、マッサ、トゥルーリ、ライコネン、ハミルトン、トロロッソ・ベッテル、ルノー・アロンソ、マクラーレン・コバライネン、トロロッソ・ブルデー、トヨタ・グロック、レッドブル・ウェーバーとなります。この際1コーナーでは、コバライネンがアロンソをオーバーテイクします。しかしアロンソも踏ん張り、2コーナーから3コーナーで鮮やかなクロスラインを取り、3位を奪い返します。
 8周目、ウィリアムズ・ロズベルグが、先陣を切ってタイヤをドライに切り替えます。9周目にはグロック、10周目にはアロンソとベッテル、12周目にはマッサとコバライネンがタイヤをドライに履き替えます。続いて13周目には、トゥルーリ、ライコネン、ハミルトンがタイヤ交換をしますが、急速に乾いていく路面で1周の差は致命的となります。すなわちマッサはトップをキープしたものの、ライコネンは4位、トゥルーリは6位、ハミルトンは7位に落ちてしまったのです。代わりに上位に来たのが2位のベッテル、3位のアロンソ、そして5位のフィジケラ。5位以上がタイトル獲得の条件であるハミルトンは、早くも13周目にトゥルーリをパス、17周目にはフォースインディア・フィジケラをパスし、5位に順位を回復します。一方ハミルトンに抜かれたトゥルーリは、続くコーナーでバランスを崩し、芝に半分飛び出してしまいます。かろうじてクラッシュは避けられたものの、ベッテルのうしろ、10位まで順位を下げてしまいます。
 2位に上がったベッテルは、マッサと交互にファステストを更新しながら、1秒前後の差で周回を続けます。そのベッテルは、28周目に2回目のピットインを行います。この際の給油時間から、ベッテルは2ストップ作戦であることが判明します。他の上位陣は、全て1ストップ作戦を採用しており、36周目のグロックのピットストップを皮切りに、38周目マッサ、41周目アロンソとハミルトン、43周目コバライネン、44周目ライコネンと各車ピットに入ります。
 この時点でのオーダーは、マッサ、ベッテル、アロンソ、ライコネン、ハミルトン、コバライネン、グロック、トゥルーリ、レッドブル・ウェーバー、BMWザウバー・ハイドフェルド。しかしベッテルは、52周目にピットに入り、ハミルトン4位、ベッテル5位と、順位が変わります。
 この順位をキープすれば、例えマッサが優勝しても、ハミルトンのタイトル獲得は確定します。しかし天は勝者たるにふさわしいことを試すが如く、最後の試練を与えます。65周目にまさかの雨が落ちてきたのです。雨足はスタート前ほどの激しさはありません。しかしブラジルの雨は時にバケツをひっくり返したような大雨となる場合が多々あり、そのときはドライタイヤで走るのは自殺行為となります。この状況をふまえ、上位陣で最初に動いたのはハイドフェルド。66周目にタイヤをスタンダード・ウエットに履き替えます。これを見たライコネン、アロンソ、ハミルトン、ベッテルは67周目に、マッサも68周目にウエットに履き替えます。一方グロックは、ドライのままで走り続けるギャンブルに出ます。
 このタイヤ交換で順位は、マッサ、アロンソ、ライコネン、グロック、ハミルトン、ベッテル、トゥルーリ、コバライネン、ウェーバー、ハイドフェルドとなります。しかし70周目、ドライタイヤでの周回を続けていた、周回遅れのクビカがハミルトンの前に出たそのとき、ベッテルもハミルトンの前に滑り出したのです。ハミルトン6位! 悲愴にくれるマクラーレンピット、歓喜にわき上がるフェラーリピット。残り1周、ベッテルのペースに、レスダウンフォース設定のハミルトンは、ついていくのやっとという状態になります。ファイナルラップ。マッサが一足先にチェッカーを受け、タイトルに王手を掛けた瞬間、最終コーナーで最後のドラマが発生します。ドライタイヤで周回を続けていたグロックでしたが、最後の最後で雨足にタイヤが耐えられなくなったのです。その脇をすり抜けていくベッテルとハミルトン。奇跡の逆転で5位に滑り込んだハミルトンが、優勝のマッサを抑え、ドライバーズタイトルを手にした瞬間でした。
 こうして優勝マッサ、2位アロンソ、3位ライコネン、4位ベッテル、5位ハミルトン、6位グロック、7位コバライネン、8位トゥルーリ、9位ウェーバー、10位ハイドフェルドの順位で、劇的なブラジルグランプリは幕を閉じます。


◇感想

 雨に弱いと言われたマッサが、雨をものともしない快心の勝利を上げ、ポイントを97に伸ばしました。しかしハミルトンも最後の最後の大逆転で4ポイントを積み上げ、98ポイントを獲得。結果ハミルトンが自信初の、そしてF1史上最年少のドライバーズタイトルを獲得しました。2年連続で僅か1ポイント差で、タイトルが決まったこととなります。
 パルクフェルメにマシンを止めた後、コクピットでハミルトンの順位を聞いたマッサは、ヘルメットごしに目頭を抑えます。そのシーンが印象的でした。この日マッサは、素晴らしき敗者となりました。しかし去年、1ポイントで涙を流したハミルトンが、1年後の同じ場所で歓喜に包まれたのです。この涙を糧として、強くなれ!マッサ!!
 あー、マッサびいきのコメントになっちゃいましたが、ハミルトンも年間を通して、安定した強さを発揮しました。浮き沈みが激しく見えるマッサに対し、常にポイントをリードし続けた強さ、したたかさが、最年少でありながらタイトルに導いたのです。新たな勝者に拍手。



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