Round.16 ブラジルグランプリ
18.Oct.2009 : アウトードロモ・ホセ・カルロス・パーチェ
周回数 : 71周
◇予選グリッド
ウェットコンディションの予選、タイトル争いを演じているレッドブル・ベッテルがQ1で、ブラウンGP・バトンがQ2で姿を消す中、ブラウンGP・バリチェロが、うれしい母国GPでの、そして逆転王座への可能性を大いに高めるポールポジションを獲得します。
以下、2位レッドブル・ウェバー、3位フォースインディア・スーティル、4位トヨタ・トゥルーリ、5位フェラーリ・ライコネン、6位トロロッソ・ブエミ、7位ウィリアムズ・ロズベルグ、8位BMWザウバー・クビカ、9位ウィリアムズ・中嶋、10位ルノー・アロンソとなります。
またバトンは14位、ベッテルは16位でした。なおトヨタ・グロックの代わりに出場した小林は、11位からのスタートとなります。
◇決勝
スタートでは、ポールのブラウンGP・バリチェロがトップを守り、レッドブル・ウェバーがそれに続きます。ここで順位を大きく上げたのがフェラーリ・ライコネン。スタートで一気に順位を2つ上げ、さらに2位ウェバーを伺います。しかしここでウェバーにヒット、フロントウイングを破損しピットに入ることとなります。混乱はさらに続きます。バックストレッチエンドの4コーナーから5コーナーにかけて、フォースインディア・スーティルとトヨタ・トゥルーリがサイド・バイ・サイドとなります。しかしやや強引にドアを閉めたスーティルのため、トゥルーリは芝にタイヤを落としてしまいます。このため挙動を乱したトゥルーリは、スーティルにヒットした後タイヤバリアへ。ここでリタイヤとなります。一方のスーティルも、コースから戻る際にアロンソにヒット、シンガーポールでBMWザウバー・ハイドフェルドを撃墜したのと同じことをしでかします。これによりセフティーカーが入ります。
序盤の混乱は、まだ続きます。16位まで順位を下げていたライコネンが、フロントウイングの交換のためにピットイン、その前ではマクラーレン・コバライネンが給油作業を行います。しかしコバライネンはピットアウトの際、給油ホースをつないだままスタートしてしまい、引き千切られたホースを引きずったまま、ピットレーンに出てしまいます。ここで災難はライコネン。コバライネンのホースからばらまかれたガソリンを全身に浴びてしまい、一瞬の間をおいて炎に包まれます。幸いガソリンの量が少なかったため、大きなダメージは受けずにレースに復帰できましたが、ひやりとした一瞬でした。
こうした序盤の混乱の中、5周目にレースが再開されます。この時の順位は、バリチェロ、ウェバー、BMWザウバー・クビカ、ウィリアムズ・ロズベルグ、トロロッソ・ブエミ、ウィリアムズ・中嶋、トヨタ・小林、ルノー・グロージャン、ブラウンGP・バトン、トロロッソ・アルグエルスアリとなります。ここで魅せたのはバトン。レース再開直後の6周目には、グロージャンをオーバーテイク、ポイント圏内に順位を上げます。続く7周目には中嶋を攻略し、さらに順位を上げるべく、小林との差を詰めます。しかしここで小林は、ルーキーとは思えない、見事な、時には強引なブロックを見せ、18周に渡りバトンを封じこめます。しかし25周目、ストレートエンドでバトンが競り勝ち、勝負に決着がつきます。
トップを走っているバリチェロは、ウェバーとの差を、15周目には1.9秒、19周目には2.6秒としますが、決定的な差をつけるには至りません。こうして22周目、ピット作業を行い、8位で周回に復帰します。しかし直後、レッドブル・ベッテルにオーバーテイクされるなど、ファーストスティントの速さが見られません。このため24周目にピット作業を行ったクビカ、27周目にピット作業を行ったウェバーに逆転を許します。この結果、28周目の順位は、ウェバー、バトン、小林、ベッテル、クビカ、バリチェロ、マクラーレン・ハミルトン、同コバライネン、グロージャン、ライコネンとなります。
一時3位を走行していた小林は、31周目にピットに入ります。そして中嶋の直前でコースに戻ります。ここで中嶋は小林を抜きにかかります。しかし4コーナーでリ小林のアタイヤと中嶋のフロントウイングが接触、中嶋はコントロールを失いガードレールにヒット、リタイヤとなります。
38周目、2位を走行していたベッテルがピットイン、タイトル争いのライバル、バトンの後ろでコースに戻ります。その後1ストップ、2ストップ勢が入り乱れてのピットインが続き、43周目ハミルトン、44周目ライコネン、51周目バリチェロ、53周目ウェバー、56周目バトン、57周目ベッテル、60周目コバライネンとピット作業を行います。この結果、60周目の順位は、ウェバー、クビカ、バリチェロ、ハミルトン、ベッテル、バトン、ライコネン、ブルデー、コバライネン、フェラーリ・フィジケラとなります。
逆転タイトルには3位以上が必要なバリチェロ、しかし62周目、1コーナーでハミルトンに差され4位に順位を落としてしまいます。さらにタイヤがパンクしてしまい緊急ピットインを強いられ、8位に順位を落としてしまいます。これが最後の波乱となり、チェッカー。結果ウェバーが今期2勝目を挙げ、2位には今期初表彰台のクビカ、3位は予選17位からの大逆転となったハミルトンとなります。以下4位ベッテル、5位バトン、6位ライコネン、7位ブルデー、8位バリチェロ、9位コバライネン、10位小林となります。なおピットレーンでホースを引きずって走行したコバライネンに対し、危険行為があったとして、レース後25秒のタイム加算がなされ、コバライネンは12位に順位を下げ、小林が9位、フィジケラが10に繰り上がりました。
なお今レースで4点を加えたバトンが、初タイトルを獲得、同時にブラウンGPもコンストラクタータイトルを確定し、ダブルタイトルに輝きました。
◇感想
まずはバトンのチャンピオンに拍手です。前半7戦5勝と勝ちまくったバトンでしたが、8戦以降は低迷し、表彰台は1回のみという苦しい戦いを強いられました。しかし一方、安定した走りで着実にポイントを重ね、今日の栄光を勝ち取りました。一昨年のハミルトンが中国で、昨年のマッサがマレーシアで、ここ一番でのレースで無得点に終わりタイトルを逃したように、昨今のF1では安定したポイント獲得が必須であり、それを苦しみながらも忠実に行ったバトンは、やはり勝者にふさわしいと思います。
そしてそのバトンを、序盤抑えて見せた小林。楽しみな新人が現れたと思いたいです。