Round.4 モナコグランプリ
16.May.1999 : モンテカルロ市街地コース


◇予選グリッド

 超低速コースでありドライバーに厳しい、つまりドライバーの腕の差がもろに出るモナコ。ここで予選を有利に進めたのはフェラーリ陣営でしたが、結局は予選ラスト5分でシューマッハー兄がハッキネンに、アーバインがクルサードに逆転を許し、マクラーレンの1位・3位に対しフェラーリは2位・4位に終わりました。ハッキネンはこれで開幕から4戦連続のポールスタートですが、シューマッハー兄にとっても今期初のフロントローゲットであり、ポールとの差もわずか0.064秒ですから両者の差はほとんどないと言って良いでしょう。抜きどころの少ないコースだけに、スタートで勝敗が決まる可能性も大いにあります。
 5位には好調を維持しているスチュワート・バリチェロが、同じく好調のジョーダン・フレンツェンが6位。そしてプロストのトゥルーリが7位につけます。プロストは、昨年の不調からようやく復調の兆しが見られるようになってきました。8位にBAR・ビルヌーブ、9位・10位とベネトンのフィジケラ・ブルツがつけます。
 今回不調だったのはジョーダン・ヒルで、まさかの17位に終わります。最近は予選でフレンツェンに負け続けており、元ワールドチャンプとしては奮起願いたいところです。フェラーリの昨期エンジンを積んでいるザウバーも、今一つ波に乗れず、アレジ14位、ディニス15位と低迷。なお高木は19位からのスタートでした。また今回もBARはゾンダに代えてサロをエントリーしました。そのサロは予選12位とまずまずの位置につけます。


◇決勝

 いい天気に恵まれたモナコ。気温が上がればマシンには厳しい状況が考えられ、スタート前からサバイバルレースの感が漂います。
 フォーメーションラップはトラブルなく済み、スタートを迎えます。スタートはポールのマクラーレン・ハッキネンがホイルスピンを起こしやや出遅れます。一方のフェラーリ・シューマッハー兄は抜群のスターを決め、第1コーナーでトップを奪います。フェラーリ陣営は、オフを返上し直前までスタート練習をしており、本番でその努力が報われたという感じです。またハッキネンにつられて3番スタートのマクラーレン・クルサードも出遅れ、フェラーリ・アーバインに先行を許してしまいます。
 大きなトラブル/順位変動なく始まったレースですが、3周目には早くもリタイヤが発生します。ヌーベルシケインにて、ウィリアムズ・シューマッハー弟と、その内側に飛び込みやや強引に抜こうとしたジョーダン・ヒルが接触、ヒルはリタイヤとなってしまいます。
 その後のレースはシューマッハー兄が快調に周回を重ね、15周には早くも周回遅れをパスします(ミナルディー・ジェネ)。一方のハッキネンは、シューマッハー兄に0.3秒/1周の割合で引き離され、20周までに13秒以上の差を築かれます。2位以降では、ハッキネン・アーバイン・クルサードが約2秒の差を保ちつつ周回しています。
 33周目を迎える頃、明らかにペースの上がらないハッキネンに対し、アーバインは約0.5秒差にまで詰め寄っており、ミラボー、ラスカスと言った低速コーナーではテールtoノーズの状態が見れるまでになりました。ですがパスするまでには至らず、結局フェラーリ陣営は38周目にアーバインを早めにピットに入れます。そのころややスローダウンしていたクルサードがピットイン、リタイヤとなります。クルサードのマシンには、7周目頃以降右リア付近からスモークが上がることがたびたびであり、それが原因だと思われます。またここまでシューマッハー弟と10周以上にわたりバトルを演じていたアロウズ高木が、エンジンブローでリタイヤしてしまいます(36周)。このブローの被害を最も受けたのはハッキネンでした。39周目、高木がまいたオイルに乗った彼の車は大きくスピン、コースには戻れたものの先ほどピットインしたアーバインとの差が、あっと言う間に5秒にまで詰まってしまいます。これで大きなマージンを築いたシューマッハー兄は42周目にピットイン、9.7秒をかけてたっぷりガソリンを詰め込み、このままフィニッシュを目指します。ハッキネンは51周に、アーバインは57周目に2回目のピットを済ませますが、シューマッハー兄・アーバイン・ハッキネンの1〜3位の順位に変動はありません。なお58周目、最も遅くジョーダン・フレンツェンが最初で最後のピット作業を終えます。彼は順位を落とすことなく4位で復帰します。
 結局、この1〜4位の順位は以降変動することなく、シューマッハー兄が連続優勝で今期2勝目を、アーバインとの1-2フィニッシュで決めます。3位にハッキネン、4位にフレンツェンがつけます。しかし5位を走行していたスチュワート・バリチェロが、右リアタイヤのサスペンションアームが折れるトラブルのためリタイヤ、直後を走っていたベネトンのフィジケラ、ブルツが5位6位をとりました。
 こうして完走9台(バリチェロは規定周回を満たしており、完走扱い)のサバイバルレースは終了しました。


◇感想

 モナコ4勝目のシューマッハー兄の、そしてフェラーリの完璧なレースでした。一方のマクラーレンは未だに信頼性に難があり、またドライバーズサーキットでの脆弱性をみせてしまいました。次はエンジン・ブレーキ・タイヤに厳しいスペインだけに、信頼性に欠けるマクラーレンの不利は否めません。このままフェラーリの独走を許すことになるのか、正念場でしょう。
 さて正念場なのはデイモン・ヒル。今回も無理なパッシングがもとでレースを終えてしまいました。最近はレースに対して雑になっているようにも見えるところが心配です。今回は予選でも大きく同僚フレンツェンに水を開けられており、96年ワールドチャンプの肩書きがかすんでいます。ファンだけに次こそは頑張ってもらいたいものです。あのなめらかな昨年までの走りを、是非スペインで堪能したいものです。


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