Round.5 カナダグランプリ
13.Jun.1999 : ジル・ビルヌーブ・サーキット


◇予選グリッド

 フェラーリは、カナダグランプリからニューエンジンを投入。旧エンジンに比べ馬力では数馬力しかアップしていないとはいえ、重量で6kg軽い新エンジンの効果で、今期初のポールポジションをシューマッハー兄が奪います。開幕6連続ポールは逃したものの、きっちりセカンドローを確保したのはマクラーレン・ハッキネン。その差はわずか1000分の29秒であり、如何に両者が拮抗しているかが伺い知ることができます。
 3位にはフェラーリ・アーバインが、4位にはマクラーレン・クルサードがつけます。順位こそ違え、ほぼ毎回同じ顔ぶれであり、フェラーリ対マクラーレンの図式がはっきりしています。
 5位にはスチュワート・バリチェロがつけます。本グランプリ前にフォードがスチュワート買収を発表、ワークスとしてF1本格参戦を決定しているだけに、フォードのお膝元カナダグランプリでいい結果を残したいところです。以降では、6位ジョーダン・フレンツェン、7位ベネトン・フィジケラ、8位ザウバー・アレジ、9位プロスト・トゥルーリ、10位スチュワート・ハーバートのトップ10でした。
 その他では、地元BAR・ビルヌーブが16位と低迷、どうも父親の名を冠したサーキットでは、良いリザルトに恵まれません。
 なおアロウズ・高木は19位からのスタートです。例年カナダグランプリは完走台数が少ないので、完走さえできればポイントゲットの可能性も高くなります。ここらで、本領発揮と願いたいものです。


◇決勝

 30℃を越す過酷な天気のもと、カナダグランプリは始まりました。
 スタートではベネトン・フィジケラが好ダッシュ、マクラーレン・クルサードまでをかわして、7位から4位までジャンプアップします。しかしその後方、スタートから1コーナーの飛び込みで、早くもクラッシュが起きます。まずコントロールを失ったプロスト・トゥルーリが、1コーナーをショートカット気味に突っ切りスチュワート・バリチェロの側面にヒット、そのままスピンしてザウバー・アレジとクラッシュしてしまいます。バリチェロは周回に戻れたものの、結局トゥルーリとアレジはリタイヤとなってしまいます。このクラッシュがもとで、2周目からセフティーカーが導入されます。
 3周目、セフティーカーがピットに戻りレース再開となります。が、今度はその周回の最終コーナーでBAR・ゾンダがバランスを崩しウォールにヒット、右リアのサスペンションアームを傷めリタイヤ。これが原因で2回目のセフティーカーが入ります。結局8周目までセフティーカーの先導でレースが続きます。その後はフェラーリシューマッハー兄が、じわりじわりと2位マクラーレン・ハッキネンを引き離す展開になります。フェラーリ陣営は、予選では新エンジンを投入したものの、決勝では信頼性重視で旧エンジンに積み換えているだけに、追いつけないハッキネンには意外な展開になります。序盤はシューマッハー兄、ハッキネン、アーバイン、クルサード、フィジケラ、フレンツェン、ハーバートのトップ6で過ぎていきます。
 今年のカナダは、最終コーナーが鬼門のようで、14周にはジョーダン・ヒルも同様にウォールにヒット、戦列から離れます。そしてトップを走るシューマッハー兄までも、その鬼門に下ってしまいます。29周目、周回遅れをパスしようとした際、縁石に乗り上げジャンプしてしまい、そのままバランスを立て直すことができず最終コーナーのウォールにヒットしてしまったのです。悲劇はまだ続きます。34周目、地元ドライバーのBAR・ビルヌーブまでも同じところでクラッシュしてしまいます。このクラッシュがもとで今レース3回目のセフティーカーが入ります。
 このセフティーカー先導の間、各陣営は給油とタイヤ交換を済ませてレースに復帰、結果としてピットでの順位の入れ替えがないまま41周のリスタートを迎えます。
 リスタート直後の第1コーナー、ブレーキミスしたフェラーリ・アーバインのインをついて、クルサードが仕掛けますが、続くセナコーナーで両者が接触、リスタート直後と言うこともあって、順位を大きく落としてしまいます。結局クルサードは、この後ペナルティーストップもかせられ入賞圏内から脱落してしまいます。が、アーバインはねばり強く走り続けます。やや強引にハーバートを最終コーナ前のシケインでパスし、57周目にはヘアピンからの立ち上がりで、ウィリアムズ・シューマッハー弟をパス、4位にまで上がります。
 ラスト10周を切ったからといって、楽に終わらないのが通年のカナダ。今年もラスト4周で最後のアクシデントが発生します。2位を走っていたジョーダン・フレンツェンが第1シケインで直進、バリアにほぼ正面から突っ込むクラッシュを演じます。これで4度目のセフティーカーが導入され、結局セフティーカーに先導されたままチェッカーとなりました。
 1位ハッキネン、2位フィジケラ、3位アーバイン、4位シューマッハー弟、5位ハーバート、6位ディニス(ザウバー)の結果となりました。



◇感想

 ハッキネンが優勝し、ノーポイントに終わったシューマッハー兄とのポイント差は4ポイント。ハッキネンがポイントリーダーとしてヨーロッパ後半戦に戻ってきます。コンストラクターズもマクラーレンがフェラーリとの差を11ポイントまで詰めてきまして、今後の展開が楽しみです。ベネトンは今期初表彰台。フィジケラは3年連続カナダ表彰台と気を吐きました。
 さて、ラスト4周でクラッシュしたフレンツェンですが、ケガの具合が芳しくない場合、テストドライバー契約の中野信治が代役になる可能性が高いので、一つ楽しみが増えました。ただ、フレンツェンも嫌いなドライバーではないので、若干複雑な心境です。


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