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「メーター」



火龍族の占い師、メルは2人の女王候補が大好きのようである。
そんなメルがある日、研究員のエルンストに、こういった話 を持ちかけた。

「メーター・・・ですか。」
「そう、メーター♪こうやって、測るの〜。」

こうやって、と言いながら、メルは前に手を出している。
彼(少女のようだが、「彼」だ)が何を言っているのかと
いうと、エルンストに「計測器」を作って、と頼んでいるのだ。

占い師は、女王候補のために、少女と守護聖の親密度や、 守護聖同士の親密度を占って、教えるのが仕事だが、
それを簡略化したもの、つまり手軽に親密度が測れる機械が 有ればいいと思っている。

「しかし、そんなものが作れるでしょうか。」
エルンストはあまり自信がないようだ。
「だから、商人さんに頼むんだよ〜。」とメル。

緑の長い髪をした、うさんくさい商人が、庭園で商売を している。
ちゃんとした許可はとっているので、その点は、王立研究院と しては問題はないのだが、
エルンスト自身は、その商人のかもし出す「ただの商人でない」 雰囲気が、気になっていた。

単なる商人に、そのような難易な計測器を作る手助けを、 受けようというだろうか。否。
メルは何か知っているのだろうか、とエルンストは考えた。
火龍族は人間に比べて、勘も鋭い。何か、察知したのかもしれない。

結局のところエルンストは、緑の髪の商人が、
どこかの国の大統領であれ、財閥の会長であれ、他の世界から やってきた侵略者であれ、かわいいメルの望みを叶えて くれる人物であれば、何でもいいのである。

さっそく彼は商人をつかまえ、物理的にそんなことが可能なのか どうか、己はコンピューターで解析をはじめた。
研究員につかまった商人は、話の大筋を聞くと、

「そりゃ〜、全力をもってバックアップさせてもらいますわ、
エルンストさんのために♪」

と言ったが、水色の髪の研究員は真面目に、「私のためではなく、 2人の女王候補のために、です。」と答えた。
自分も私情を挟んでいるくせに、棚にあげるのである。

「・・・ふぅ・・・あながち、不可能でもない、と・・・。」
カツカツ、キーボードを叩きながら、エルンストはつぶやいた。




と、いうことで。
見た目には分からないが、非常に大きな予算と知力を費やされて、 そのメーターは、完成した。
見た目は、ただのリモコンである。先の方に、電流計のような 針のふれる計測器がついている。

1++++++++10+++++++++20

テストテスト〜、と言ってメルは、あたりを見まわしてから、
計測器を机の上において、その両サイドを、自分とエルンストで、 それをはさむようにした。

1++++++++10++++++++20

「15・・・いや、150ですか。目盛1つは10だと、 ここに記載されている・・・。」

と研究員。その様子を眺めていた商人は、言った。

「何や〜メルちゃんとエルンストさん、仲良しサンやな〜。」
「へへ〜。だって、メルとエルンストさんは、ラブラブだもん♪」

火龍族の少年はそう答えたが、言葉の使い方を少し間違えている。
この両サイドのガラスみたいのから、電波が出るんやな?と商人は 聞いた。そうだよ〜、とメル。

「今思ったんやけど、こんなん作ったら、メルちゃんの仕事、 無くなってしまうんちゃいます〜?」
そう、緑の髪の青年は尋ねる。ご心配なく、その点は我々も 考えました、とエルンストは答えた。彼は続ける。

「特殊な電磁波により、同じ染色体、つまり、同じ性別の2人しか 測れないようにしてあります。
よって女王候補たちは、自分と守護聖様方の親密度を知るには、 占い師に頼むしかないというわけです。」

これで手軽に、あの方々の人間関係像が、少しだけ覗けるという わけですね、とエルンストは言って、メガネを光らせた。

           
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