設定:SP2
「メーター」
火龍族の占い師、メルは2人の女王候補が大好きのようである。
そんなメルがある日、研究員のエルンストに、こういった話
を持ちかけた。
「メーター・・・ですか。」
「そう、メーター♪こうやって、測るの〜。」
こうやって、と言いながら、メルは前に手を出している。
彼(少女のようだが、「彼」だ)が何を言っているのかと
いうと、エルンストに「計測器」を作って、と頼んでいるのだ。
占い師は、女王候補のために、少女と守護聖の親密度や、
守護聖同士の親密度を占って、教えるのが仕事だが、
それを簡略化したもの、つまり手軽に親密度が測れる機械が
有ればいいと思っている。
「しかし、そんなものが作れるでしょうか。」
エルンストはあまり自信がないようだ。
「だから、商人さんに頼むんだよ〜。」とメル。
緑の長い髪をした、うさんくさい商人が、庭園で商売を
している。
ちゃんとした許可はとっているので、その点は、王立研究院と
しては問題はないのだが、
エルンスト自身は、その商人のかもし出す「ただの商人でない」
雰囲気が、気になっていた。
単なる商人に、そのような難易な計測器を作る手助けを、
受けようというだろうか。否。
メルは何か知っているのだろうか、とエルンストは考えた。
火龍族は人間に比べて、勘も鋭い。何か、察知したのかもしれない。
結局のところエルンストは、緑の髪の商人が、
どこかの国の大統領であれ、財閥の会長であれ、他の世界から
やってきた侵略者であれ、かわいいメルの望みを叶えて
くれる人物であれば、何でもいいのである。
さっそく彼は商人をつかまえ、物理的にそんなことが可能なのか
どうか、己はコンピューターで解析をはじめた。
研究員につかまった商人は、話の大筋を聞くと、
「そりゃ〜、全力をもってバックアップさせてもらいますわ、
エルンストさんのために♪」
と言ったが、水色の髪の研究員は真面目に、「私のためではなく、
2人の女王候補のために、です。」と答えた。
自分も私情を挟んでいるくせに、棚にあげるのである。
「・・・ふぅ・・・あながち、不可能でもない、と・・・。」
カツカツ、キーボードを叩きながら、エルンストはつぶやいた。
と、いうことで。
見た目には分からないが、非常に大きな予算と知力を費やされて、
そのメーターは、完成した。
見た目は、ただのリモコンである。先の方に、電流計のような
針のふれる計測器がついている。
1++++++++10+++++++++20
テストテスト〜、と言ってメルは、あたりを見まわしてから、
計測器を机の上において、その両サイドを、自分とエルンストで、
それをはさむようにした。
1++++++++10++++*++++20
「15・・・いや、150ですか。目盛1つは10だと、
ここに記載されている・・・。」
と研究員。その様子を眺めていた商人は、言った。
「何や〜メルちゃんとエルンストさん、仲良しサンやな〜。」
「へへ〜。だって、メルとエルンストさんは、ラブラブだもん♪」
火龍族の少年はそう答えたが、言葉の使い方を少し間違えている。
この両サイドのガラスみたいのから、電波が出るんやな?と商人は
聞いた。そうだよ〜、とメル。
「今思ったんやけど、こんなん作ったら、メルちゃんの仕事、
無くなってしまうんちゃいます〜?」
そう、緑の髪の青年は尋ねる。ご心配なく、その点は我々も
考えました、とエルンストは答えた。彼は続ける。
「特殊な電磁波により、同じ染色体、つまり、同じ性別の2人しか
測れないようにしてあります。
よって女王候補たちは、自分と守護聖様方の親密度を知るには、
占い師に頼むしかないというわけです。」
これで手軽に、あの方々の人間関係像が、少しだけ覗けるという
わけですね、とエルンストは言って、メガネを光らせた。
2 へ