サテライト 2


てめえら少しは手伝えよ、と恭四郎は思った。

***

勝手に正義の騎士に任命されてしまった5人、サテライターズは、 集合場所を一応決めた。
市内の商店街の「ふれあいひろば」という、無料休憩所である。

本当は、もっとしっかりした場所でも良かったのだが、 なにせ全員にやる気はないし、それに、「天の声」に、 思いっきり秘密基地っぽい場所まで提供されるのも嫌だったので、 手ごろなここに決めた。
中にはテーブルと椅子、ドリンクとスナックの自動販売機と、 ‘ご自由にお使いください‘というパソコンが一台置いてある。

ありがちなことだが、ここは市民のふれあいの為に作られた場所 だが、あまり活用されていない。いつも「ガラガラ」だ。
まして今日は1月3日なのである。日本人の大体は、家で 触れ合いを深めているものだろう。

まぁそんな都合はともかく、恭四郎は文句をたれていた。
4人が、手伝わないからだ。

恭四郎は、頭が良いからか、自分に与えられた「力」が、 どういうものか、理解してしまった。
だから、出動!!という「天の声」の掛け声のもと、どうしても 出動してしまうのだが、 他の4人も同じ能力を持っているのに、彼らは、「仕事」は 恭四郎に任せっきりなのである。

ちなみに、能力というのは・・・・

「お〜ま〜え〜ら〜〜〜!!」
・・・・ちょうど恭四郎がキレるようだ。彼は叫んだ。

「均衡(バランス)!!」

少年がバランスと唱えると、お茶を飲んでいた4人の頭上に、 ビカビカと雷が落ちる。もちろん、本物の雷ではない。

正義の騎士は「均衡」と唱えることによって、その時、 運命の天秤を持った女神が、両者のバランスをとってくれる。
早い話が、悪いほうに雷が落ちるわけだ。
バラエティ番組で、2択クイズを間違えた方に、白い粉が かかるようなもんである。

この力のおかげで恭四郎は、
やれココに怪人が発生したとか、この地域で火事が起こって いるとか、肉じゃがに糸コンニャクを入れるなよと夫婦間で もめているとか、そういった「事件」のたびに、引っ張り出されて いるのだ。
ちなみに彼は、怪人なんて居ないし、火事は消防署の仕事だし、 と思っている。
しょうがないので、肉じゃがの問題は解決してやった。
悪いのは、妻が手間ひまかけて作ったものに文句をつける、夫の 方だったようだ。(夫に雷が落ちたから)

恭四郎は「念じる」と、まるで惑星の周りを回る衛星のように、 頭上に、自分のミニチュアが出現する。
それを、ラジコンのように遠くに飛ばして、現場まで送り、その 様子を眺めることが出来るのだ。
本体がバランスと言えば、その小さい方から拡声器のように声が 流れるらしい。

「カッコ悪ぃ戦い方だなー。」
恭四郎はやれやれとつぶやいた。変身ポーズや決め台詞が なかっただけ、マシだと思うしかない。

それにしても、何故他の皆は、自分を手伝ってくれないのか。
そう、恭四郎は思う。

厳密に言うと、静一は、手伝う意志はあるのだ。
彼は、恭四郎のために、現場の地図をインターネットで検索して、 パソコンにうつしている。静一は、コンピューター関係の会社に 勤めているらしい。こういうのは得意な分野だそうだ。
・・・それも、相手から直接聞いたのではなく、女性3人がしゃべって いる間に話題になったので、知っただけだが。

「女3人寄れば、かしましい(うるさい)とは、よく言ったもんだな。」
と、サテライターズのレッドは思った。

***

必ず「謎」を解いて、使命から解放されてやる、と恭四郎は思った。



1月4日になったので、社会人の静一と恵子は、仕事の都合で 集合場所に来られなくなった。
まぁ、いてもいなくても同じなのだが・・・。(恭四郎談)

なので、高3と高2と小5の3人は、スナックを食べながら ダラダラと雑談している。天から声が聞こえなければいいな、と思いつつ。

いやいやながらも、相手の話をしっかり聞いている恭四郎は、 自分たち5人が「正義の騎士」に任命されたのには、理由があるのだと聞いた。
無論、「天の声」から。
どうしても、この5人でなければならなかった理由がある、と。

それが「何」かは、自称海王星人は教えてくれなかった。
これからも教えるつもりはなく、
「分かったときは、それは騎士が解散するときだ」と天の声。

ということは、謎をあばけば使命から解放されるのだ、と恭四郎は思う。
恭四郎は腕を組む。何としても、理由を見つけてやる。

最初、これかと思ったのだ。
5人は空に集められたとき、その直前に「暇だ」と口にしていた。
・・・恭四郎自身が言っていたので、他のメンバーもそうかと思って、聞いたのだ。
案の定4人も、そういった意味のことを言っていて、 「暇人を集めた」と、天の声は言い張るつもりだったのかと思った。
しかし、それではなかったらしい。
「何だ、何なんだ。」と恭四郎は考え込む。


「何、眉間にシワ寄せてんの?」とハルカ。
ポテトのスナックを持ちながら、そう言う彼女の方を向いて、 恭四郎は言った。
「お気楽でいいな、お前らは。」

その言葉を聞いて、ハルカはムッとする。が、子供(なずな)の手前、 大人気なく怒るのは格好悪いと思って、柔らかく言った。
「あ〜ら、私たちも同じ状況にいるんですけどねぇ、一応?」
「ホントに一応だよな。」と恭四郎。

ぷちっ。元々短気なハルカの、我慢の限界が来たようだ。
ガタッと音を立てて立ちあがって、相手に掴み掛からんとする勢いで、 恭四郎に向かって言う。

「アンタねぇ、何よその言いぐさは!!」
「あ?!何だ真実を言っただけだろ!やんのかテメェ!」

うるさい2人の間で、なずなはポテトスナックをかじっている。
「おにいちゃんたち、うるさいよ〜。
‘ふれあいひろば は静かに使いましょう‘って書いてあるでしょ〜?」
そう彼女はつぶやいたが、恭四郎とハルカは聞いていなかった。
なすなは、続けて思う。


「バランスって唱えたら、どっちに雷が落ちるのかなぁ。
とめないアタシが悪いのかな〜?」

                            つづく>>>


「創  作」
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