早押し戦隊 クイズレンジャー

第8話 「ユー ガット メール」

自己紹介をして脱力するのが、恭四郎の使命ではなかったはずだ。
落ち込むのもほどほどに、彼は少年たちに自分の名刺を渡して、
何かあればそこに連絡するように、言った。
恭四郎の名詞には会社名と肩書き、そして名前自体、会社の電話番号とメールアドレスが 記載されている。
じゃあメールしますね〜と忍が代表して言って、彼らは別れる。

英世の実家までこっそり帰る為の新幹線代をどうするか、
そこに居た「大人」に相談すれば良かったのに、と気づくのは夜になってからである。

***

五京恭四郎は、一人暮らしだ。
高層マンションの1室に住んでいる。
そのマンションは部屋は広く景色も最高なのだが、いかんせん、家賃が高い。
都会のど真ん中に立っているので、当然なのだが。
そんなマンションだから、恭四郎の家に「隣人」というものは居ない。
隣も、そのまた隣も、空き室なのである。
「売れない」ので、当分埋まる予定はなさそうだ。
交通の便がいいからここを借りたのに、「成金趣味!」と、ある人間に言われた。
・・・自分の恋人なのだけど。

恭四郎自身だって、カネモチカネモチした思考・感覚は、好きではない。
だから普段から質素に暮らしているつもりだし、無駄に金品を身につけていたりは、 しないではないか。
スーツや靴が安っぽいと、立場上まずいと思って、「いいもの」を買っているけれども。
それに恭四郎は、彼女の放った「成金」という言葉も、気に入らない。
そもそも成金というのは、将棋の歩が「金に成る」ように、わずかの時間で 「金持ちになった(なりあがった)」という意味のはずだ。
自分で言うのも何だが、五京家は随分昔から、”代々”裕福なのである。
成金、ではない。

もちろん、そんな事を言うと、また口論になると分かっていたので、 賢い青年は黙っていた。
そんなことを思い出しながら、恭四郎は噂(?)の自宅マンションに帰宅した。

当然誰もいない、静かな部屋に帰宅して、PCをつける。
新着メールが届いていた。


                    続く>>>


「創  作」