ナイトハンター×クイズレンジャー コラボ「きらぼし」
その4(お題:不規則)



グレイ邸に戻ってきたクラウスは、ザギに事のあらましを告げた。
「アンタも手伝って!」という彼女に、少年はもちろん「うん!」と答えた。
そして2人は、急いで家を出ていく。
ソウマだけが、「やれやれ、騒がしい奴らだな。」とのんびり構えていた。
周りに誰もいなくなると話も出来ないから、かなり暇だ。
体が動かないので、時間つぶしに刺繍やレース編みも出来やしない。

「・・・・。」
しょうがないのでソウマは考え事をすることにした。
自分は早朝に突然死んでしまったわけだが、悔いは、あまりない。
しいて言えば、隣の旦那さんのスラックスのすそ丈直しが終わってないことが、 気がかりなくらいだ。
下を向いて、自分の身体を眺めてみる。
ザギは「息をしていない!」と言っていたが、胸の部分がたまに、あがったり下がったりしているような 気がする。
心臓が、動いているということだろうか?
残念ながらソウマは今、魂の状態らしいので、触って確かめてみることは出来なかった。

ソウマとしては、自分の人生はどうでもいいのだが、
クラウス達があんなにも一生懸命になってくれるのが、
少し、嬉しかった。

+++

2人で調べ物をしていた彼らは、ある答えにたどり着く。
反魂はんごんほう
やはり、そのような唄は存在した。譜もあり、クラウスは読むことが出来た。
しかし、問題があった。「楽器」だ。

「フルート、これは分かるわ、横笛。
ヴァイオリン?弦楽器らしけど、見たことがないわね。
ハンマークラヴィーアにいたっては、どんな楽器なのかすら、分からない。」

クラウスは才ある吟遊詩人なので、楽器がありさえすれば、それを演奏することが出来る。
しかしこのホワイトキングダムには、必要な楽器自体が無かった。
リュートやバンジョーなど、この国に普及した楽器で演奏できる唄なら良かったのだが、 そんなことに文句を言っても、始まらない。

せっかくこれで助かると思ったのに、と、ザギはがっかりした。
クラウスの表情をうかがうと、クラウスは落ち込むどころか、目をらんらんとさせている。
そんな様子を不思議に思い、ザギは尋ねてみた。
「クラウス、どうしたの?何を考えているの?」

「ガイコクに行くわよ。」
亜麻色の髪の女性がそう言い切ったので、竜の少年は驚いた。
「ガイコク!?ガイコクって、よその国でしょ!?
そんな、どうやって行くのさ!」
ホワイトキングダムは、閉ざされている。
昔、民主制から君主制に変わろうとした時、他国の忠告を無視するため、 魔法障壁を張って、閉じこもった。
だから、外国と比べて文化度が非常に劣っているが、攻撃に遭う心配もない。
よその国では、鉄の乗り物が空を飛んでいるのだと、クラウスは知っている。

「まず、隣のスカーレットキングダムに行くのよ。
そこからは、いろんな方法で、外に出られるって話だから。」
と、クラウスは言った。
確かにその国では、
「この夏のバカンスは、何で行く?
      車?電車?飛行機?テレポート?」

という広告が、テレヴィジョンの中を流れていたりする。
しかしだ。問題は、そこまで行く方法が、確立されていない事。

その、スカーレットキングダムに行くまでが大変じゃない、という少年に、「大人」は告げた。
「あのねザギ、

・・・世の中、金さえ出せば何とかなる事は、多いのよ。」

それは事実なのかもしれないが、
あまりクラウスの口から聞きたくなかったなぁ、とザギは思った。

■その5(オープンカー)に続く■

<<<お題創作赤のトップ
<<<ホーム