ナイトハンター×クイズレンジャー コラボ「きらぼし」
その5(お題:オープンカー)



金があれば何でも、という大人の言葉にショックを受けつつ、
ザギとクラウスは、東部の、ある波止場にやってきた。
波止場ではあるが、これから船に乗ろうというわけではない。

そこに、ポツンと1人、白い髪の男が立っている。
長身で、瞳は夜の闇より暗い黒色だ。
薄く笑っているが、ぱっと見「何者」なのか知れない。
吟遊詩人は、知っていたけれども。

「や、久しぶり。アレックス。」
クラウスは、そう言った。どうやら白い髪の青年と顔見知りのようだ。
アレックスと呼ばれた彼は、無言で会釈のみをした。
聞きたげな竜族の少年に、クラウスは答えを与える。

「彼はさ、望めば魔法で、国外へ”飛ばして”くれるの。
私は昔、ちょっと世話になってさ。
スカーレットキングダムの女王に呼ばれて、どうしても行かなくちゃ いけなかったのよ。
でも、船が出てるわけじゃないし、鎖国を理由に断ってたら、召還されたってわけ。
彼、アレックスは元々スカーレットキングダムの人間なんだけど、 勝手に”行き来”してるわ。テレポートで。」

そう言ってクラウスは、腕を組んだ。
ザギは正直、彼女の言っていることがよく理解できなかった。
だがしかし、とにかくこの白い髪の青年が、外に出してくれるのだから、それでいいと思った。
”大人”2人が契約の話をし出すと、意外な方向に、話が進んだ。
「え?直接飛ばしてくれるの?」
スカーレットキングダムまで行ってから、そこからまた違う国を目指すつもりだったが、 この召還師(?)は、彼ら2人を直接ガイコクに行かせるつもりのようだ。
可能ならば、そのほうがもちろんありがたいが(何しろ時間がない)、 問題は帰路だ。

「ではこの護符を。」
表情の変化に乏しい青年は、ぽつりとそう言って、2人にそれぞれ、紐付きのお守りをかけた。
魔法の品で、1回きりの魔力で、”ここ”に戻ってこられるらしい。
高くつくんでしょうね、とクラウスが独り言のように呟くと、アレックスは満面の笑みを作って、 言った。
「えぇ、高いですよ!」
でも、後払いで結構ですから、と彼は言う。
信用問題らしく、代金は後で良いようだ。
2人がまだ行き場所も告げていないのに、アレックスはお客を飛ばそうと、”構えた”。

「え、え、まだどこって言ってないでしょ!?」
そうザギが叫ぶと、アレックスはさも当然のような口ぶりで、言った。

「それくらい、”見え”ます。
楽器、及び奏者を捜してるんでしょう?」
そうよ、と女性が答えると、アレックスは前に手をかざして、
「あぁ、ここがいいでしょう。ちょうど光が集まりました。」
と予言者めいたことを告げて、テレポートの魔法を発動させた。

そして、日本国東京都新宿区の五京セントラルビルの最上階に2人を飛ばした。

+++

というわけで。
恭四郎の秘書・箱部が来訪者と説明しているのは、
亜麻色の髪の吟遊詩人の女性クラウスと、灰色の髪で目の下が黒い、ローブを着た竜族の少年のザギの 2人である。
もちろん素性は分からないので、突然(このセキュリティの厳しい最上階に) どうやって入り込んできたのだろう、この外国人2人は、と思っているに過ぎないのだが。
言葉は理解できないが悪意がなさそうなので、箱部は、迷子?のような2人を、 恭四郎の元まで連れてきた。

ちょうどその頃、五京セントラルビルの入り口前に、少年が2人やってきていた。
高校生の羽柴忍はしばしのぶと、奥太陽おくひろあきだ。
駐車場があるにもかかわらず、入り口脇にデンと高級外車が停まっているのを見つけ、忍が言う。

「わぁ〜すごい車。誰だろう、あんなの乗ってるの!?」
そう言ってから、車自体に人影があるのに気づき、あの人のかな?と呟いたが、
「違うだろ、あそこに乗ってるのは、多分運転手だよ。」
と、太陽は返す。
どーして分かるの?と尋ねられて、太陽は、あの人物が手袋をしているのが見えたとか、 左ハンドルの車で、右側、つまり助手席に座っているからだとか、 さっきから時間を気にして何度も時計を見ているだとか、つらつらと延べた。

「すごいねぇ、探偵みたい♪」
楽しそうに忍がそう言うと、糸目の少年は、
「・・・お前が探偵の助手をやりたいから、俺に探偵役をしろって言ったんだろ・・・。」
と、あきれたように呟いた。

まーともかく、五京ビル見学に行きまっしょー!と忍は言い、2人は正面玄関を 入っていった。

■その6(お題:精神分裂症)に続く■

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