ナイトハンター×クイズレンジャー コラボ「きらぼし」
その6(お題:精神分裂症)



何者なのか分からない、来訪者2人を連れてきた箱部に向かって、恭四郎は尋ねた。
「どこの人か、分かりました?」
すると、彼の有能な秘書は残念そうに首を振りながら、答えた。
「いえ、申し訳ないのですが。
話している言葉は、古代アイルランド語とドイツ語とフランス語、
それに、若干日本語が混ざっている、言語のようです。」

ぱちぱちと、軽く拍手をして、恭四郎は言った。
「さすが、歩く語学事典と言われる、箱部さんだなぁ。
そこまで分かるなんて。
ということは、大体言葉、通じるんでしょう?」

えぇという回答に、社長は満足そうにうなずいた。
彼らから話を聞こうと、恭四郎が体を動かすと、電話のベルが鳴る。
当然、箱部が出て対応する。

「お客様です。」
と彼が言うので、今忙しいのに!と恭四郎は内心苛立ち、
「今、悪の大魔王と戦っていて、忙しい って言って下さい。」
と告げた。

「それでは、病気だと思われます。」
との、ごもっともなツッコミを、箱部から貰った。

+++

新しい来客は高校生であり、恭四郎の仲間の忍と太陽だった。
「あれ、悪の秘密結社と戦ってるんじゃなかったんですか?」
と、忍が言う。
少し伝達情報がズレているが、そもそも戦っているのでは無いのだから、良い。
泉は終始黙っていたが、このやりとりが可笑しかったようで、クスクス笑っていた。

ソチラハ、ドナタデスカ〜?と、妙なカタコトで、忍は続けて聞いた。
金髪の女性と、灰色の髪の青年が、ソファに腰掛けているからだ。
「さぁ、誰かは俺も知らない。」
と部屋の主=恭四郎=が答えたので、高校生2人は顔を見合わせた。

今からそれを聞くんだ、と恭四郎は言った。
10人は座れそうなバカでかいソファに、まぁ皆、座れと着席をうながして、 箱部に通訳を頼みつつ、会話を始めた。

+++

「吟遊詩人ねぇ・・・。」
泉が、そう呟いた。
泉も、アーティストであるから、楽器を弾きそう(背中にバンジョーを背負っている)女性の、 職業が気になったようだ。
ちなみに、どうやってここにたどり着いたかという質問に対し、「飛んできた」との回答を得たが、 自分たちもヘンな活動に巻き込まれている影響で、
「ふーん、飛んできたんだ。」
と一も二もなく、皆が納得した。

何をしに?と、目的を問うと、「楽器を探しに」と女性は答えた。

「フルート、ヴァイオリン、ハンマークラヴィーア」

彼女と、その横の少年?(性別が見た目では分からない)は、 その3つの楽器を探しにきたようだ。
彼らが西洋の人っぽかったので、「そりゃ、遠いとこ、ゴクロウサマデス」と、忍は呟く。
日本語のままだから、相手に通じるわけはないのだが。
ただザギは、相手の少年がこちらを気遣ってくれた印象を受けたので、会釈をした。
それを見て、忍は笑う。
横の太陽も笑っているのだが、目が細いので分からない。


「ヴァイオリンは、ヴァイオリンだよね。ここに”ある”けど、弾ける?」
そう言ってヴァイオリニストは、自分のケースからヴァイオリンを出した。
そして意地悪をして、松ヤニをつけずに、弓を渡した。
しかしそれを受け取ったクラウスは、「何か塗らないと、音が出ないでしょ」と言って、弓を返した。
クラウスは知っていたのではなく、持った瞬間に理解したのだ。
吟遊詩人のスキルである。
返ってきた弓に苦笑し、泉は今度は弾ける状態にして、ヴァイオリン一式を手渡した。
クラウスは、それを弾いた。

♪〜〜〜〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜〜〜〜♪

ぱちぱちと、この部屋にまた拍手が響いた。
拍手をしたのは、泉だった。
「・・・ブラヴォー。
ひとのヴァイオリンを聞いて、感動したのは久しぶりだ。」

■その7(お題:一酸化炭素)に続く■

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