ナイトハンター×クイズレンジャー コラボ「きらぼし」
その3(お題:エレベーター)



東京、高層ビル群から少しだけ外れた一角に、「五京セントラルビル」は立っている。
そこの最上階、社長室で恭四郎は、英字新聞を読んでいた。
別に格好付けているわけではなく、読みたい記事の載っているものが、 英語で書かれているから、読んでいるだけだ。
新聞といっても、うさんくさい記事が多い新聞社で、○○湖の巨大生物、 UFO襲来、ビッグフットにさらわれた少女、魂の抜け落ちる奇病など、記事はさまざまだ。
日本の某ヴァイオリニストがハリウッド女優をナンパ、というネタだけは、 本当だろうと、恭四郎は思ったが。

そう、自分の同級生(というか友人)の話題をチェックしたくて、恭四郎はその新聞を 読んでいたのだが、そこに偶然、「彼」から連絡が入った。
もちろん、取り次いだのは秘書の箱部である。
(恭四郎は仕事中、私用の携帯は、ロッカーに入れている)

「あ、泉さん?・・・え?下?入り口にもういる?
じゃあ、上がってきてよ。受付で名前言えば・・・って、顔で皆分かるか。」
電話を切ろうとしてから、恭四郎は付け加えた。
「階段は、使わない方がいいぞ。疲れるから。」

+++

久しぶり、と恭四郎は、友人を迎えた。
やってきた友の名は三千院泉。世界に名をはせた、ヴァイオリニストだ。
恭四郎は若いが、社長付き秘書などではなく、社長自身である。
泉がその手に、ヴァイオリンケースに見えるものを2個持っていることに気づき、 恭四郎は尋ねた。
「それは何だ?バイオリンか?」

うん、ひとつはヴァイオリンだよ、と泉は答えた。
「ひとつは、ヴァイオリンケースに似せたカバン。作ってもらったんだけど。」
そういうくだらない話をしている最中に、隣室にひかえていた箱部がやってきて、 社長にこう告げた。
「お話中、失礼いたします。
・・・実は、不思議な来訪者が来ておりまして・・・。」


+++

吟遊詩人は、悩んでいる。
王宮付きの資料室の中で、悩んでいる。
魔法学の本を片っ端から調べてみて、何か打開策が無いか探している。
とにかく、時間との勝負だ。
例え方法が見つかったとしても、それが”随分後”ならば、効果が無くなってしまうのだから。

ちなみにこの資料室は、本来は、関係者以外立ち入り禁止の場所。
クラウスは、無理を言って入れてもらったのだ。 そんな事が出来るのも、彼女が吟遊詩人として有名だから、だ。
人口が100万人程度のこの国、ホワイトキングダムの中で、 「吟遊詩人」という職業についているのは、たった5人である。
もちろん、吟遊詩人もどきはたくさんいるのだが、本当の吟遊詩人とは、
「どんな楽器でも、持った瞬間に、完璧に演奏することが出来る」
というスキルを備えている。特殊な職業なのだ。

ともかく、そんな吟遊詩人の彼女は、必死になって本のページをめくっていた。
彼を救う方法を、探すために。

ビヨン

突然、マヌケな音がした。
クラウスが背負っている、バンジョーの弦が切れた音だった。
不吉な・・・!と思っている場合ではない。「マズイ」ことは、もう起こっている。
そこでクラウスは、急に思い出した。
音!

音よ!とクラウスは叫んだ。
どうしてこんなことが、今まで分からなかったんだろう?
魔力のかかった音楽。自分だって弾けるじゃないか。
元が音だから無属性で、どんなモンスターや動物にも効く!
彼女は頭を振った。気づくのが遅すぎる、自分に苛立つ。
だが、そんなことを反省しているヒマは無い。
鎮魂の唄を演奏し、歌うのはいいとして、譜が無い。
この資料室内にあるだろうか?

「あぁもう、時間も人手も足りないわ!」
クラウスはひとつ言い放って、部屋から出た。
一旦、ザギと合流しよう。ひとりよりふたりの方が、何をするにしても早いはず。
どうするかという方針は、決まったのだし。
彼女は、馬で駆けて、戻った。

ザギは、自宅で待機(というか、死人?の様子見)の係だったのだが、 ソウマと喋っていた。
「そういやぁザギ、お前、あんな早い時間に、 俺の部屋に、何しにきたんだ?」
そういう男に、竜の少年は答えた。
「え?来た理由?
そんな事聞くの?野暮だな〜。」

野暮だな〜じゃねぇよ、とソウマは思った。

■その4(お題:不規則)に続く■

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