SCC 11

「どうだった?」と2人は同時に尋ね、
「ベタベタ触られました。」とだけ、アレックスは答えた。

***

リーダーであり、「策士」であるハーディが考えた作戦は、
見目麗しい男のアレックスを、美しいもの好きの女王の元へやって、 ”お友達”にさせること。
そして自分たち2人も含めて顔見知りになり、城の内部事情を知ろう、という 魂胆である。

そこで、ベースは良いのに、普段は”おかしくなっている”ので、 服装や髪型にまるで気を使わない青年、 アレックスを、一度すごく綺麗にして、
それこそ、妙な例えだが「嫁に出すような」気のいれようで、飾り立てた。
そして、ハイッと気合をいれて見送ってから、ハーディとリサの2人は、 うまくいくだろうかと、やきもきしながら、彼が帰ってくるのを待っていたのである。

そして、戻ってきたアレックスにどうだったかと尋ねると、
彼は「ベタベタ触られた」と答えた。
・・・それでは、成功したのかどうか、分からない。

どうだったのよ?とリサがもう一度聞くと、アレックスは珍しく 瞳を伏せて、下を眺めた。
その様子を見て、ハーディは彼に「どーしたー?」と尋ねる。

「もし、うまくいかなかったのでも別にいいからさー、結果、教えてよー。」

ハーディはそう言った。するとアレックスは、その彼に向かって告げる。
「ハーディ、貴方は席を外してくれませんか。」

・・・・・・・・・・・・・。
ハーディとリサの2人は黙ってしまった。彼の言い方から察するに、 アレックスは今、「リサにだけ話したいこと」があるということだ。
珍しいことだった。アレックスとリサは、対ハーディに比べれば、互いの歳は 近いが、今まで、あまり直接話すことはなかったから。

リサは驚きつつも、リーダーの少年に軽くウィンクをしてから、
「そういうことらしいから、ちょっとあっちにいっててくれる?」
と頼む。
いいよーと少年は告げ、2人の姿の見えない、随分向こうに行った。


「何なの、急に?」

リサは腕を組んで、尋ねる。破戒僧の青年は何を言うのだろうと、リサは 興味深げに彼を眺めていた。
白い髪の男は、つぶやく。

「・・・私は、”彼女”以外の女性に、興味はありませんし・・・。」

彼女というのは、不慮の事故で亡くなった恋人のマチルダのことだろう。
アレックスが、彼女以外に興味がないことぐらい、言われなくても分かっている つもりだ。
何が言いたいのかしら、とリサは思って、続きがあるらしい彼の言葉を待っていた。 アレックスは言う。

「貴女がた姉妹は、特に似ているとも思いません。」

それはリサ自身も思っていることなのだが、アレックスの言葉を聞いて、リサは 驚いてしまった。
リサは、自分がマチルダの姉だと、ひとことも言っていないのである。

もちろん、アレックスとマチルダは恋仲だったのだから、その会話の中に、 リサの名前が出たのかもしれない。「私の姉さんは、騎士なのよ。」と。
だから彼が、リサがマチルダの姉だということを知っていてもおかしくはないのだが、
今まで一度もふれなかったから。
そういった素振りも見せなかったので。

だからリサは、白い髪の僧侶が、自分をマチルダの姉だと知らないか、 または知っていても「それが何だ」と思っているのだと、考えていた。
それなのにアレックスは、今更「貴女がた姉妹は」といった言葉を使う。

本当に、何があったのだろう、とリサは思う。
”彼女”にしか興味がなく、その彼女とあまり似てもいないが、戸籍上は姉の自分に、 アレックスは今、何を言うのだろう。何を言いたいのだろう。

深く息を吸いこんでから、白い髪の男、アレックスは告げた。

「・・・似ていないと思うから。
だから私は、決して貴女と彼女を、一緒にしているわけではありません。

でも、今だけ。

マチルダの代わりに、慰めてくれませんか・・・・?」

彼は、突然リサに抱きついた。
あまりのことに、リサは慌てた。


                    続  く


「創  作」