SCC 2


「な、何なんだよ、こいつらはー!!」
そう、男は叫んだ。

***

「彼らは、何だと思います?」とアレックス。
「うーん、盗賊じゃないかなー。」とハーディ。
「山賊かもしれないなー、ここ、山だしー。」と少年は続ける。
リサは言う。
「盗賊でも山賊でも何でもいいけど、”私たちの邪魔をする人間は”〜〜〜?」
すると男性2人は合言葉のように、口を揃えて言った。

「「斬る!」」

それは、たった3人のパーティだ。
見たところ、短剣しか携えてない子供と、女剣士と、僧侶。
だから山賊が、カモだと思ったのも、仕方ない。

正確には、子供は子供ではなく(彼は小柄だがもう18歳だ)
女剣士は、剣士という簡単な「くくり」ではなく、「騎士」で、
僧侶に見える彼は、破戒僧だから、今現在僧侶ではないのだが。

バタバタと倒れていく男たちの中で、瀕死の状態で、ひとりの男は 思う、
「何なんだ、こいつらは。」と。
強い。強いというか、おかしい。何なのか、本当に不明だ。
とりあえずこの男は、僧侶に見える白い髪の男が、僧侶ではないことだけは 分かってから、気を失った。
普通の僧侶は、あんなものは持ってない。

「ほっほ〜、すごいね相変わらず、アレックスはー。」
そう、ハーディは言った。白い髪の青年は、大きな剣を振りまわしている。

それは、西の言葉で「両手の剣」という意味の、ツヴァイハンダーという種類の剣だ。
その名の通り、両手で持つように作られた、大きな武器である。
それをアレックスは、片手で持っている。
アレックスには右手がないから、当然なのかもしれないが。

というより、普通、破戒僧が武器を持つことにしたとしても、ツヴァイハンダーは 選ばないだろう、というヤツである。
アレは、戦闘に慣れた戦士が持つものだ。
何故彼は、それを武器として選んだのか。
この際それはどうでもいい。彼の剣が、周りに圧倒的な恐怖感を うえつけているのは事実なのだから。

「俺、あんなデカイ剣で斬られたくないなー。」
とハーディは、ひとごとのように言った。・・・ひとごとなのだが。
「私も、御免だわ。」
とリサも言う。彼女は、自分の細身の剣をくるくると回して、威嚇だけをしている。
実際の攻撃はアレックスに任せるとして、自分は楽をしようというわけだ。
リサの剣はキラキラと光っている。それを見て、ハーディは言った。

「リサの剣さー、岩も切れるような、切れ味じゃん。騎士が持つ、特注の剣だもんねー。
そんなのと、俺のこの使い古された短剣と、刺さったらどっちが痛いかなー?」
「多分そっちでしょう。切れない武器の方が痛いものよ。」

そうリサが答えて、シュ、と鞘に剣をおさめた。
ひとりの青年が、”ごろつき”数人を見事にのし終えたから。
ハーディとリサは、戦闘中ずっとくだらないことをしゃべっていただけだ。
そんな様子に、アレックスは文句を言う気配も見せない。
そういうものだと思っているらしい。
・・・・ちなみに2人も、戦ったら戦ったでそれなりの腕はあるのだが。

3人は、倒れている山賊の頭らしき人物の元に集まった。
ハーディは言った。
「どうやらさー、さっき、ふもとの街を襲ってきたみたいで、 結構”持ってる”みたいなんだけどー。どうするー?」
「それは、街のひとは困ってるんでしょうね。」とリサ。
「でしょうね。」と、アレックスも言った。

3人は、山賊の頭の腰についている、金が入っているだろう袋を眺めて、それぞれ 言う。
まず、ハーディ。
「もらっちゃおっかー。俺たちも金は要るしー。」
次にアレックス。
「一度盗られたものですからね、所有者が変わっただけですね。」
最後にリサ。
「普通なら返しにいくんでしょうけど、あいにく、私たちは正義の味方じゃないし。」

ということで、山賊の金は、全額巻き上げることに決定したようだ。

”おかしな”彼ら3人は、他人から「おかしいぞ」と注意されることがない。
正確に言えば、「おかしいぞ」と止めることの出来る人間がいないのだ。
彼らは、破壊的に強かったから。

3人の首には賞金がついている。
本人たちは、正確な額を知らないが。
知ったら知ったで、また、意外だとか何だとか、話のネタにするのだろう。
3人は、一般的に言って「悪いこと」をしている。だから、追われている身だ。
実は追手も、危ないからあまり近づかないようにしているのだが。
だから3人は、ずっと監視されている、密やかに。


金の管理を任されているハーディが、今回の”収入”をプラスして、 ホクホクの顔で、年上の2人に告げた。
「結構貯まったしー。そろそろ行く、国外へー?」

それを聞いて、監視している人間は固まった。


                  続 く


「創 作」