SCC 3

「この国」にはもう限界を感じたのか、3人は、
「よその国」に行こうと思っているようだ。

まず大前提として、この国は、非常に他国に行きにくくなっている。
それは、「こもっている」からだ。
元は普通の開かれた国だったのだが、ある時、国のトップが「勝手言って」 閉じこもった。
なのでこの国は、周りの国より文化が遅れている。
代わりに、魔法だと魔術だとかいう方面の、進化はしたのだが。

3人が、興味のあるのは、隣の国の、スカーレットキングダム。
その名の通り、王国だ。
ハーディたちのいる国(ホワイトキングダム)と同じく、珍しく「魔術」等に 興味のある国で、適当に文明化してはいるものの、そういった文化も残っている。
その国のトップ、スカーレット王は女王なのだが、彼女は「魔女」だという 噂がある。

「魔女だってさー。」とハーディ。
「実年齢より、若く見えるからでしょうね。」とアレックス。

クイーンスカーレットは、60歳を超えた老女である。
が、非常に若く見えるのだ。
大体、見た目は40代半ばくらいと言ってよいだろう。
彼女の若さの秘訣は、その、いつも身につけている緋色のショールにあるという。

ふーん、というハーディ。
彼はどうやらその「緋色の布」に興味を持ったようだ。
確かに、噂が真実なら、それはすごい「お宝」だから。
「若さを保つ布かー。」
ハーディはリサに尋ねた。「リサは欲しい、そういうのー?」

するとリサは答えるのだ。「いらないわ」と。
「欲しくないのー。ふーん。」とハーディ。
騎士の彼女は、どうやら思うことがあるらしい。

ともかく、3人の次のターゲットは、その「布」に決定したらしい。
3人は”犯罪人の集まり”だが、しいていうなら、”盗賊団”である。
物を盗むから。
盗賊団といっても、それは「どうしても名前を与えなければならないとしたら」の 話である。
当人たちは、どう呼ばれることかなど、別に気にしていない。
が、本当に一応、盗賊団としてマークされていることを、3人は知っている。

女王のものを狙おうとすると、非常にガードが固くて苦労するだろうに、 3人は、そういうことも気にしていない。
気にしているのは、「こもっている」この国から、どうやったら出られるか、 そのことだけ。
すでに貰う気でいるらしい。

「そういえば、盗賊団っていえばさー。」
ふいに思いついて、ハーディは言う。
「こども向けの話でさー、 女1人、男2人の3人のパーティの、盗賊団がいてさー。
本人たち頑張ってるんだけど、いつも上手くいかなくて、正義の味方に やっつけられて、逃げて帰るんだよなー。」

俺、そいつら好きだったなー、とハーディはつぶやく。
どうやら、児童書か何かの登場人物であるらしい。
アレックスとリサはその話を知らなかったが、彼に話を合わせた。

「ハーディは、”彼ら”のようになりたいのですか?」
そう、アレックスは問う。するとハーディ、
「んー、そうでもないけどさー。楽しそうだから、あいつらー。」

楽しいのが一番だよなー、とハーディは続ける。
この、”時間のない”少年は、ひたすら楽しさを追求している。
それが、どれだけ他人の迷惑になろうとも。

とりあえず、目指すはスカーレットキングダムと定めて、3人はキャンプをはった。

***

「月の綺麗な夜に」1 ハーディ&リサ


誰しも眠れない夜というものはあるものだ。
特に心配事がなくても。有っても。

「眠れないの?」とリサは、先にテントを出た少年に、声をかけた。
聞かれたほうは、「ううん、別にー。」と答えて、空を見上げてから、つぶやいた。
「月が綺麗だったからさー。」
見ておかないと、損じゃんー?とハーディは続ける。

リサは、聞いた。
「ねぇ、ハーディは、月、好き?」
「割と好きー。面白いじゃん、太陽と違って、見かけ変わるしー。」
そうハーディは答える。リサは、彼の隣に座った。


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「創 作」