SCC 7

誰しも、
そこに何がある、と、聞かれたら、
それが何になる、と、尋ねられたら、
自信を持ってやっている事でも、その気持ちが揺らぐものだ。
けれど、この3人にいたっては、それが通用しないのだろう。

そこに何がある、と。
それが何になる、と。
もし尋ねても、返ってくる言葉は決まっているのだ。

「何があるってー?
うんー。よく分からないけどさー。
いいじゃん、重要なのー?意味を見つけることがさー?」

大切なのは「今」で、
今に付属する「未来」には、あまり興味はない。
時間が経てば、「未来」も「今」になるから、愛するけど。
未来には何がある。
いや、未来を手にする為に、今、こうしているのだ。

***

「どうしよっかー。」とハーディは言った。
「どうしたらいいかしらね。」とリサ。
「どうしましょうか。」とアレックス。

3人は腕を組んで考え込むが、そのうち、いつものようにハーディが提案する。
「こういう時はさー、逆を考えてみればいいんだよなー。」
逆とは?とアレックスが尋ねると、ハーディは答えた。

「逆だよー。
俺達はさー、スカーレットキングダムに行きたいんだよなー。
で、この国は国交を持ってないからー、外国に行くのが難しいわけー。
でもさー、スカーレットキングダムはー、他の国にも出てるんだろー?
何で出国してるんだー?船かなー?」

そうでしょうね、とリサは言う。彼女は国に仕える騎士だから、そういう知識がある。
ハーディは、空(くう)に書いた地図を指差しながら、言った。

「船がさー、この国の方向に進んでくる時期を見計らってー、
俺達は反対側からー、結界を一部分だけ破るんだよー。
そこから”飛んで”ー、でー、その船に一時、乗るだろー。
その船はどこかの国に行ってー、人や荷物を降ろしたらー、また母国に帰るよなー。
それでスカーレットキングダムに潜入できるじゃんー?
どうかなー、この案はー?」

駄目かなー、俺、一生懸命考えたんだけどなー?とハーディは続ける。
リサとアレックスに、反論は無かった。
この国は”こもる”ために、国の周りに結界を張り巡らせてある。
その結界全てを破るのは不可能だが、一部分、ターゲットを決めて、
数秒間だけでも、その扉を開くことができたら。

”飛んで”というのは、高等魔術テレポートの事を指すのだと思われる。
ハーディは、魔力の強いアレックスに、その魔法が使えるかどうか、 確認したことは、ない。
だが、ハーディは勝手に「出来る」と仮定して、話をすすめているようだ。
らしいですね、とアレックスはふふと笑う。幸いにも彼は、それを使うことが 出来たから、ハーディの案に意義を唱えなかった。
それで良いんじゃないかしら?とリサは言い、さも当たり前のように、「出来るんでしょ? アレックス」と彼に向かって、言った。
「まぁ。」とアレックス。

じゃあ、決定な〜とハーディは、くるりと一回転してから言い、自分のリュックから 地図と時計とコンパス(方位磁針)を取り出す。
周りの2人が何をするのかと思っていると、ハーディは向こうを指差して、言うのだ。

「今の時間帯だとー、あっちになるなー。」

反対されることも、失敗することも、
何も危惧せずに、ハーディは、「その案」で行くと決め付けて、用意をしてきたようだ。
すごいワンマンぶり。
そして、そんな彼に素直に従ってしまうのは、何故か。一種のカリスマか。

結界を破って、向こうの海まで出る。
船の上の人間は、自分たちを見て、驚くだろうか。
何だ、海賊かと、驚かれるかもしれない。
実力行使に出てくるのなら、こちらも反撃するまでで。


「スカーレットキングダムに着いたら、まず何食べるー?」

ハーディはそう言って、また、途中の過程の危惧を飛び抜かす。
彼は、未来に興味が薄い。「今」が大切で、未来は来るかどうか、分からないものだから。
その未来を掴むために、女王の居る国に向かうのだけれど。


                   続  く


「創  作」