SCC 8

この国の殻を破って、外へ出た。
そこは海。船の上。
乗組員たちは、もちろん驚いて。どうやら海の精霊あたりだと思われたらしい。
ポリポリと頭をかいてから、ハーディは言う。
「あのさー、船賃払うから、スカーレットキングダムまで 乗せてってくれないー?
船、占領して舵を奪うって手もあるんだけどー。
面倒くさいしー。双方の、時間と労力の無駄だからー。」

***

3人は、スカーレットキングダムへの潜入に成功した。
いや、潜入という言葉は間違っているかもしれない。
スカーレットキングダムは他国へ国交をひらいているのだから、 異邦人が簡単に入ってこれるのは、当然なのだ。
3人はまず、最初の港町の様子を観察する。

流石に、文明と魔法学が混入された国といったところで、
商店街の並んだテレヴィジョンには、

「この夏のバカンスは、何で行く?
      車?電車?飛行機?テレポート?」


という広告が流れている。テレポートが、この中で一番、速いが費用のかかる 移動方法らしい。
たくさんのテレヴィジョンを眺めて、ハーディは嬉しそうに言う。

「ほっほ〜、テレヴィジョンだー。
話には聞いてたけど、実際見るのは初めてだよー。」

確か、ヴィジョンが映像で、”テレ”が「遠い」って意味だよなー、と彼は続ける。
ハーディは、外見に似合わず博識だ。
アレックスが「そうですよ。」と微笑んで言って、続けた。
「テレポートの”テレ”と同じです。」

広告が終わると、この国の住人でない3人にとっても、見なれた顔の人物が登場した。
40代くらいに見える女性。その肩には、彼女のトレードマークの緋色のショール。
「あー、クイーンスカーレットだねー。」
何で出てるのかなーと、ハーディはつぶやいた。

「ワタクシは、美しいものが大好きなのです。」

そう、クイーンスカーレットは言った。
どうやら、インタビューを受けているらしい。
この国の「女王」は、ハーディたちが知っている王制の女王とは違い、 市民と皇族の間は、とてもフランクであるようだ。
女王も、”いち有名人”の1人にすぎないといったところで。


「そういえば。」
とアレックスは突然言って、ハーディとリサを驚かせた。
何?と2人が同時に聞くと、アレックスは言う。

「クイーンスカーレットには、こういった噂があります。美しいもの好きで・・・。」
「で、何なの?」とリサ。
両刀バイであるとか。」

それを聞いた彼女は少し固まったが、数秒後に言った。
「・・・・、いいんじゃないの、別に。」

ふーん、そうなんだー、とハーディは面白がって笑い、
「リサ、この国で騎士に立候補してみたらー?
美人だから、近衛兵なんかに起用されるかもよー?」と言った。
こどものくせに、大人をからかわないの!とリサは声を荒げる。
「こどもじゃないってー。もう18だしー。」とハーディ。
こどもよ!!とリサは、真っ赤になって言っている。


ホワイトキングダムでは「見張り」がついていた3人も、
この国ではノーマークであるはずなのに、
・・・・3人の後ろの草陰で、物音がした。


                   続  く


「創  作」