SCC 9

そこから出てきた人物を見て、3人は、
「自分達は、馬鹿にされてるんじゃないか。」と思ったのだ。
本人に、そんなつもりは無かったとしても。

草陰から、男が出てきた。

はっはっはっはっはっは、と、大声でその人物は笑う。
髪は色の濃い金髪で、風になびくくらいの長さ。
服は、鎧にマント。いわゆる、肖像画から出てきたようなタイプ。
最も印象的なのは、青い宝石のはめ込まれたヘッドリングが、
本来は額にあるべきなのに、目を覆う位置まで落ちてきているということだ。
彼を見て開口一番、ハーディは言った。

「あんた、ヘッドリング落ちてるぞー。それじゃ見にくいだろー。」

それなのに相手は、やはりハハハハと笑う。何だコイツと、他の2人も思った。
ハーディ達は確かに、ここより機械文明の遅れた所に住んでいた。
だが、この「いかにも現実離れしています」的な、
そう、言いかえれば「ファンタジー調」な格好の人物が、目の前に現れるのは何故だ。
スカーレットキングダムは、テレヴィジョンが普及している。
もしかして、テレヴィジョン用の見せものでもやっているんじゃないか、と3人は思う。

尋ねてもいないのに、謎の人物はいきなり名を名乗った。
「私の名前は、シ=サ。」

「言いにくー!」とハーディはつぶやく。
聞いてないわよねぇ?とリサが隣のアレックスに言うと、白い髪の青年も 「そうですね」と答えた。
「君達の名前は?!」と金髪の男は、偉そうに尋ねる。
ここで、この男がこの国の警官等だったら、その行動は分かるとしても、やはり その格好はどうか、とやっぱり思う。
服はともかく、ヘッドリングを上げろ。気になってしょうがない。
そうハーディは拳を握って、思った。

かちゃ

そういう、聞きなれない音がした。鉄のこすれ合う音というか・・・。
何か、部品が引っかかる音。
シ=サが、その音の正体のものを出したので、3人は、あぁと納得した。


リサは、「話には聞いていたけど、あぁいう感じのものなのね。」と。
ハーディは、「すげー。珍しいなー。あ、でもこの国じゃ珍しくないのかなー。」と。
そしてアレックスは「強い武器を持ちたがるのは、自分にかまってほしい、 自分に注目してほしい、という、精神的な歪みの表れ、ですね。」と思った。

シ=サの持っていたものは、銃。

ピストルである。それを、3人に向かって構えた。
しかしハーディもリサもアレックスも、顔色ひとつ変えることは、なかった。
ピストルが、どんな武器だか知らないわけではない。「飛び道具」であり、殺傷能力が あることも、十分承知だ。
だが、3人は銃を向けられても、全然気にならないのである。

それは、第一に、相手が撃たないと雰囲気的に感じたからで、
第二に、元神官のアレックスは”剣を抜いていない時”、自分と仲間の周りに 魔法障壁を張っているので、銃だろうが弓矢だろうが、そういった”軽いもの”は 当たらないのである。
(彼は、剣を振るう時だけ障壁を解除するが、そうなったら なったで、攻撃は最大の防御というヤツで、やはりハーディ達がケガをすることはない。)

相変わらず冷めた目で、シ=サの方を見つめていると、シ=サは銃を脇にしまい、 3人に向かって、言った。

「驚きもしないとは、おかしな人たちだ。」

おかしいのはあんただろー、とハーディは思う。全く、と大人2人も思っていて、そんな 3人の様子に、シ=サはまた高笑いをする。
金髪の妙な男はマントをひるがえして、「また会おう!」と去り際に言ってから、 また草陰の方へ戻っていった。
ポカンとする3人。

「何だったんだろー。」とハーディ。
「何だったのかしら。」とリサ。
「何だったのでしょうね。」とアレックス。

数秒後、ま、いっか〜とハーディは言って、お宝を手にするための作戦を、 皆で練り始めた。


                     続  く


「創  作」