あなたのとりこ 1


その日は聖地にはありきたりの晴天ではなく、珍しく厚い雲が空を覆った日であった。

「あまり天気がよくありませんね。そろそろ戻りましょうか。」

オスカーは、空を見上げながら、愛馬の背で言った。もちろん相手はジュリアスである。風の守護聖が交代し、鋼の守護聖のサクリアも心なしか不安定になり、疲弊した宇宙を支える女王と守護聖たちはここのところ等しく執務が忙しくなっている。
そういうわけで、お互いの気持ちを告白し合った仲であるこの炎と光の守護聖は、なかなか二人きりになる時間を得ることができずに一月余りが過ぎている。
雲の流れが速い。時々覗く青い空もすぐに灰色の雲にかき消されてしまう。

「そうだな。雨が降ってくると面倒だ。早く帰るとしよう。」

ジュリアスはそう言って、愛馬の手綱を引く。オスカーもそれに続き、二人の駆る馬は、聖地の、広い草原を疾走する。
しかし、間に合わなかった。雷鳴とともに大粒の雨が二人と二頭を叩き始める。
「仕方がありません、ジュリアスさま!あの林の中の東屋で雨宿りをしましょう。おそらくそんなに長い時間降り続くことはないはずです。」
オスカーはそう言って、林の中に進路を変えた。ジュリアスもそれに続く。

「あっという間にびしょ濡れになってしまったな。オスカー、大丈夫か?」
ジュリアスが愛馬を東屋の柱に繋ぎながら言う。
「大丈夫と言っていいのか……はは、俺もびしょ濡れですよ、ジュリアスさま。」
「せめてマントを羽織って来ればよかったな。」
「そうですね……」
出て来た時はいい天気で、気温も高かった。二人の夏物の上着は、雨に濡れて何の役にも立たなくなっている。オスカーは仕方なく上着を脱いだ。中に着ている白いシャツまでぐっしょり濡れて、その逞しい胸板と背中がほとんど露わに見える。

ジュリアスも上着を脱ぐ。ベストを着ていたため、オスカーほど肌までぐしょ濡れというわけではない。だが金の長い髪から、雨の雫が滴り落ち、結局は中まで染み込んでしまうのも時間の問題のようだ。
オスカーはジュリアスのその黄金の糸の束を手にとって、くちづける。
「こんなに濡れてしまった。何か、拭うものはないのでしょうか。」
もう一月もこの体に触れていないような気がする。ジュリアスもオスカーも、そのことを強く意識したのか、ごくりと息を飲んだ。
ジュリアスは白いシャツの上からはっきり透けて見えるオスカーの胸の突起を、その長い指で触れた。オスカーはびくんと体を震わせる。
「そなたこそ、こんなに……」
ジュリアスはその突起を強く刺激しながら、もう片方にくちづけた。
「あっ……ん……」
「…こんなに、濡れてしまって……」
ジュリアスはそのままオスカーの背中に右腕を回した。背筋から腰に向かって、ジュリアスの指が滑り降りて行く。その舌では胸を刺激しながら、ジュリアスは右手を背中側からズボンの中に滑り込ませ、左の手で、オスカーの前に触れる。
「ジュ……っ…ジュリアスさまっ……あ……ぁっ」
「もう、長いこと、そなたを抱いておらぬ。」
「……はい、…あの……ですが……っ」
ジュリアスは構わず左手だけでオスカーのベルトを外す。そしてボタンを外し、ファスナーを下げ、下着も下ろすと、オスカーのそれを握った。
「あっ……うッ…」
「熱いな……」
ジュリアスの右手はいつの間にか双丘を分けて、その熱い肉襞に長い指を差し入れて掻き回すようにしている。左手は前を強く握っている。オスカーはもう、まともな会話ができる状態ではなかった。
「あっ、あふッ、ジュ、ジュリアス…さまっ……こ、こんなところで……いけませ……ジュリ…アスさま……らしくもな……っ…ひぁッ!」
ジュリアスの口はいつの間にかオスカーの熱く燃えるような耳朶を噛んだり、耳の穴を舐めたりしていたが、そのオスカーの言葉に、耳元でこう囁く。
「私らしくない、か……。ふふ、だがそれはそなたのせいだ。そなたが私を狂わせるのだ。そなたが愛しすぎて、私は、どうにかなってしまいそうだ。」

ジュリアスは左の二本の指でオスカーを締め付けながら、残った指で下の膨らみを弄んでいる。右手の指の方も容赦なくオスカーを掻き回す。
「もう、我慢が出来ぬ。」
「お、俺も…ですが……っ、こんな……誰か、来ま…あっ…ひう…っ……あ、ああ……熱い…熱……っ……あああ…ぁ…っ」
「構わぬ。このようなところには、誰も来ぬ……」
「です……が…馬たち…がっ……あっ…ぅ」
「構わぬ…気にするな。」
オスカーの体が、ジュリアスの腕の中で激しく震える。ついに、耐えられず片膝を折ったオスカーの重みで、ジュリアスの指がオスカーの奥深くに達する。
「ひっ!あ、あっ、も、も……ぅ…あぁ……」
ジュリアスもさすがに指だけでオスカーの重みを支えるのは無理と知り、その指を引き抜くと、手早く自分の前を開け、熱く硬く猛ったものを取り出す。

オスカーの体重を支えるために一度その締め付けを止めた左の手で、すかさずオスカーを抱えた。オスカーの熱いものは、びくびくと痙攣し、その先はたっぷりと露を滴らせている。ジュリアスは東屋の中心にあるテーブルの上に彼を横たえ、もう一度その中心を指で締め付けると、散々指で緩めたうしろの肉襞に、自らを挿しいれた。
「ひぃっ……!!…ふ、あ、あん……んっ、あ…ぅ……ぅ……ぁ…」
オスカーはジュリアスの揺らぎを全身で受け止めながら、徐々に意識を手放し始めていた。いつの間にかオスカーの下履きは石畳の上に落ち、オスカーの両足はジュリアスの肩の上にあった。だがオスカーの熱は、先ほどからジュリアスの指に堰き止められたまま、出口を失っている。オスカーは遠くなりかけた意識を必死で引きとめながら、ジュリアスに懇願する。
「お……願い…です…、ジュ…リアス…さ…、あ…っ…はぁ…あぁ…イ…かせ…て…っ」
「まだだ、私が…まだ…んんっ……」
ジュリアスはオスカーの腰を担ぎ上げたまま、自身を激しく突き挿れる。
「あ……ぅ……ジュリ…ア…んう……」
オスカーは潤んだ目を虚ろに向け、唇の端から雫を滴らせながら、ふわふわとした浮遊感を味わっていた。痛みも、苦しみも、もうほとんど感じなくなっている。
「い……ィ…あ……ァ、はぁ……ん……ジュ……リ……ぁ……ぁ、ふ…」
オスカーのその恍惚とした表情は、ジュリアスの官能を強く刺激した。
「オ……スカー…っ…んんっ…」
ジュリアスは最後の一突きをくれると、オスカーを締めていた指を離した。
「……ぁ……っ、あ……ん……っ」
漸く解放を許されたオスカーは、低く小さな呻き声とともに絶頂を迎え、その意識を手放すと同時に熱を迸らせた。ほぼ同時にジュリアスも、その痙攣する肉襞の中にすべての欲望を吐き出した。