シアワセノカタチ。3




「うわっ!」
オスカーは突然初めての感覚に身を震わせた。まさか……そこは…だが…。
「何か塗るものはないのか……いきなり入れては切れてしまうかも知れぬな…。」
な、何をですかジュリアスさま……と、オスカーは思ったが口には出せなかった。そう、それは紛れもなくあの穴に……ああ、そうだ。まだそれがあったのだ。
「そうだ。確か荷物の中に傷薬の軟膏があったな。あれを塗ればよいのだ。」
ジュリアスはいそいそと立ち上がる。オスカーはそれを見てどきっとした。ジュリアスもいつのまにか全裸になっている。その白い肌の後姿をオスカーは思わずうっとりと眺めていた。が……、それどころではない。ピンチだ。だがこんなに嬉しそうなジュリアスに、それはやめてくださいと言えるのか……?答えは否、だ。
「うぅ……ッ……」
オスカーの中に、ジュリアスの長い指がゆっくりと入って来た。そしてそれがひんやりとした軟膏をオスカーの内壁に塗りつけていく。丹念に、丹念に。
「ひ……っ!あ、ああ……」
オスカーはその冷たさと中を掻き回される感じに、たまらず喘いだ。
「もう少しの辛抱だ。……すまぬな。」
ジュリアスの優しい声とすまなそうな笑顔に、オスカーはまた感じてしまった。先ほど萎えたはずのそれが、再び頭をもたげてくる。
「はっ……ああ…」
やがてジュリアスがオスカーの足を左右に分けて、ぐいとその腰を持ち上げた。そして今しがたそこから抜き取った指を再び差し入れて来る。いや、今度は二本だ。
「ああっ!!」
オスカーの体が硬く強張って行くのがジュリアスにもわかった。
「オスカー。力を抜くのだ。大丈夫だ、そなたに傷をつけぬよう気をつけて行う。そなたは私を信じて迎え入れて欲しい。頼む、私はそなたとひとつになりたいのだ。」
「は、はい……ジュリアスさま…あ、あ…」
そこにジュリアスのものが当たった感じがした。そしてそこが押し広げられ、何ものかがみしみしと、肉と恥骨をを押し分けて侵入してくる感覚。太い。あたりまえだが指の比ではない。そしてそれはゆっくりと、ゆっくりと……。
「あ……はぁ…ふ……ん…ぁ…あぁ…んっ…」
オスカーは意識が朦朧としてくる。痛いのだが、それが不快とは思わない。むしろその痛みもジュリアスが自分に入ってくるためだと思うと、幸せすぎて気が遠くなるのだ。
「大丈夫か?…切れてはいないな?…んん……っ…ああ、私も良い…ぞっ…」
ジュリアスの顔も官能の表情を湛えている。美しい。そう、オスカーは思う。
挿入が終わると、ジュリアスが自分を揺さぶり出した。最初はきつくてたまらなかったそこが、だんだん、なんとも言えないような感覚を持ち始める。
「あ…ぁ、ふっ、んっ……ぅ、ぁっ……はぁ…ぅ…ジュリ…アス…さま…ぁ…」
遠くなりそうな意識を引き止めて、薄く目を開けると、ジュリアスも白い頬を紅く染めてなんともいえない恍惚とした表情をしている。オスカーの官能も一気に高まる。
「オスカー……っ、あ、良いぞ…私も……も…うっ……」
オスカーの中に、ジュリアスの熱いものが流れ込んでくるのがわかった。
「あ……俺も……も…おっ…は…ぅ…んっ……ぅ…」
オスカーは再び達し、腹に自分の熱いものを感じながら意識を放り出した。



オスカーは暖炉のぱちぱちと燃える音で目を覚ました。気がつくと、毛布に包まれたままジュリアスの胸の中にいる。夢ではない。その証拠に確かにあの部分が痛い。
そう、夢ではない。確かに俺はジュリアスさまに愛されたのだ。そう思うとオスカーの目から、再び涙が溢れていた。
「オスカー、気が付いたのか。大事無いか?痛むのではないか?」
ジュリアスが胸に抱いたオスカーを覗き込むように言う。
「だ……大丈夫です…ジュリアスさま……俺は…ただ、嬉しくて……」
オスカーは溢れる涙を流れるままに、そう答えた。
「そうか、良かった……。私も嬉しいぞ。」
「ジュリアスさま……」
ジュリアスにはオスカーのことがたまらなくかわいく思えた。そして二人は何度目かの長いくちづけを交わす。



そのまま二人は寄り添って眠った。



「なんと、まあ……」
翌朝、オスカーはジュリアスの声で目がさめた。まだ少しあの部分は痛むが、何とか起き上がり、毛布を腰に巻きつけて立ち上がる。ジュリアスは窓際にいた。
「どうしました、ジュリアスさま……。あ…っ!」
外は嘘のように吹雪が止み、真っ青な空には太陽さえ覗いている。
「どうやら、私たちのサクリアの効果がもう出たようだ。」
ジュリアスはもう防寒用のマントを除いたすべての衣服をつけている。その姿はすっかりいつもの光の守護聖だ。ジュリアスは嬉しそうにオスカーのほうを見る。
「良かったな。私たちがここに来た甲斐があったのだな。こういうとき、本当に守護聖でいることに幸せを感じるぞ。」
「ジュリアスさま…あの…」
「どうした、オスカー。ああ、もう服を着ると良い。すっかり乾いているはずだ。」
「あの……本当にあなたは…俺のことを…」
ジュリアスのこういう様子を見て、再びオスカーは昨夜のことが夢ではないのかと思い始める。オスカーの心は不安でいっぱいだ。
と、ジュリアスが不意を討つように、オスカーの唇に軽く唇を重ねる。
「夢などではない。オスカー。愛している。」
「ジュリアスさま……」
「聖地に戻ったら、またいつか二人で休暇でも貰ってどこかに行こう。まあ、あまり簡単にはいきそうにないがな。」
ジュリアスはそう言って笑った。
そうか。夢ではないのか。そう思えばあの部分の痛みもつらくはなかった。オスカーは恋しいジュリアスに愛される幸せを噛み締めた。



だが、心の隅に少しだけ……。
ジュリアスを抱く自分の姿がよぎる。
いつか一度だけでも、ジュリアスを自分の腕の中で泣かせてみたい。
そんなことを考えて…ゆっくり首を振った。

「いいんだけどね。」
そう、小さな声でつぶやきながら。