ドニエプル川を渡河せよ
〜 ハリコフ大戦車戦 作戦研究 〜


◆ドニエプル川渡河は可能なのか

 以前、翔企画より発売されていた「ハリコフ大戦車戦」のリプレイを書きましたが、今回はその時に考えた作戦について検証したいと思います。
 前回のリプレイの後に、ソ連軍の作戦の一つとして、スターリノ(右図中南東の都市)の占領とその弊害について述べました。利点としては比較的容易に独軍補給基地を破壊でき、美味しい10ポイントの勝利点を得ることができること、欠点としては序盤で1個軍が壊滅してしまうことでした。
 ところで、序盤の1個軍の壊滅は致命的なのでしょうか。
 仮にソ連軍が全ての独軍補給基地を破壊した場合、その得点は5×10=50ポイントになります。このポイントは、独軍が全ての都市を確保し、全てのソ連軍を撃破した場合の得点60ポイント(都市の占領:5×5=25ポイント、ソ連軍の撃破:35×1=35ポイント、計60ポイント)と比べて充分ではないでしょうか。
 実際の展開では、ほとんどの場合独軍はクルスクまで届きません。加えて序盤に独軍歩兵師団が2〜3個撃破されること、ソ連軍の損害は多くても20ユニット前後(ゲーム開始時点でソ連軍は35ユニットを持っています)であることから、独軍の勝利ポイントは20ポイント以上減殺されます。
 この場合、ドニエプル川沿いの2都市(サポロジェ、ドニエプロペトロフスク)の占領を行わなくても、ハリコフ以北さえ保持できれば、ソ連軍の勝利ポイントは30ポイント+独軍の撃破数となり、独軍の勝利ポイント35に対して勝利の可能性が出てきます。
 また、遠からず補給切れによってソ連軍の戦車軍は壊滅する運命にあります。そこで戦車軍をもってスターリノの攻略を実施すると、よけいな勝利ポイントを独軍に献上する必要もなくなります。


◆悪魔の作戦

 そこで今回私が立案した作戦は、

@正面軍機動集団をスターリノ攻略部隊とする。
A同軍がスターリノを攻略した後、西方へ展開してサポロジェ、ドニエプロペトロフスクの攻略に転用する。
B第1親衛軍は、正面軍と入れ替わりに西方へ進出する。
C早期に第69軍をハリコフ方面に移動させる。
D北方の攻略には第38、40両軍を当てる。
E第6軍と第3戦車軍は史実に従い、西方に進攻する。
F最終目標は正面軍によるドニエプル川の渡河(笑)。
 この作戦では、スターリノの保持は無視しています。またスターリノを攻略した正面軍は、その移動力を活用し一挙にドニエプル川の渡河を目指します。この場合、うまくいけば更に20ポイントの勝利ポイントを得ることが可能です。
 この作戦のどこが「悪魔」かというと、正面軍にはドニエプル川渡河後死兵になることを強要する点でしょう。ドイツ軍の援軍の主力は、東方から登場します。そのためスターリノに正面軍が残っても、独軍の攻撃を支えることは不可能でしょう。どうせ4ターンからの補給チェックによって、この軍団は遠からず全滅するのですから、補給の続く限り前進させようというのがねらいです。しかも、補給切れになった場合、主戦戦線外で独軍のユニットの何個かを引きつけてくれる囮としての効果もあります。ポポフ中将には悪いのですが、ここは囮になってもらいましょう。
 基本的な部隊の移動は、右図を参照して下さい。

 次のページからは、実際の作戦経過をお話しします。 



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