ドニエプル川を渡河せよ
〜 ハリコフ大戦車戦 作戦研究 〜


◆序盤〜スターリノ、クルスク、ハリコフ〜

 南方では予定通り正面軍が南下、第1親衛軍が西進します(図1)。南下した正面軍の鼻面には独第19装甲師団がいるので、最大戦力を接敵させ攻撃を行います。このゲームでは、戦力比が5:1を超えると1/6の確率で、6:1を超えると1/2の確率で敵の撃破が可能なので、独軍に戦線を構築させないためにも、戦力を集中して弱いユニットを撃破するべきです。また1:1の戦力比でも大きな損害はないので(悪くても2ヘクスの後退)、独軍の最強ユニットたる武装SS装甲師団には、ソ連軍の最弱部隊たる狙撃兵軍で攻撃を加え、移動を拘束するべきでしょう。
 この結果第19装甲師団は壊滅、スターリノに至る最大の障害を除去した正面軍は第2ターンにスターリノを占領、補給線の再構築のため第3ターンの移動は低調だったものの、第4ターンにはその快速を生かしてドニエプル川東端のサポロジェに到達しました(図2)。
 中央から北方にかけても、2ターンに第40軍によりクルスクが順当に陥落、3ターンには第3戦車軍がハリコフを占領しています。
 独軍に与えた損害は、2個SS装甲師団と1個装甲師団を含む6個師団であり、充分な戦果を得ることができました。


図1 第1ターン 南方方面のソ連軍移動


図2 第4ターン サポロジェ前面のソ連軍の配置
◆中盤〜ドニエプル・バルジ〜

 第4ターンのソ連軍の攻撃の焦点であったサポロジェの攻略は、1/6の確率でしか起こらない「両軍損害なし」の判定で攻撃は失敗に終わります。その結果独軍は援軍がサポロジェに到着、サポロジェの占領はまず不可能となりました。また、独軍の東方からの援軍は、南北に延びきった細長いソ連軍の戦線に圧迫をかけうる位置まで進出しています(図3)。
 第5ターンからは、戦線の薄いハリコフ東方で、独第6、7装甲師団と歩兵師団の反撃が始まりました。その結果、ソ連軍第69軍は押し戻されています。しかし兵力を西方と東方とで分断されている独軍は、決定的な戦力を集中できず、戦線は安定していると言えるでしょう。
 西方において、独軍は兵力不足が深刻なため、戦線の構築に徹しています。ソ連軍にとって、サポロジェ、ドニエプロペトロフスクの占領は難しくなりましたが、ハリコフまでの間に縦深的な戦線を築くことができました(図4)。また補給チェックに失敗した戦車軍団が大量に発生したため(8個軍団中6個の補給が途絶えた)、戦線の内側に戦車軍が取り残される形となり、予想以上にユニットが残っている結果となりました。


図3 第5ターン ドニエプルの突出部


図4 第6ターン 独軍の移動後の両軍
◆終盤〜ハリコフ前面〜

 補給切れと泥濘のため、積極攻勢は不可能となりました。それに反比例して独軍の反撃密度は増加していきます。ですがソ連軍の歩兵軍の防御力は高く、後退はさせられても壊滅までは至りません。結果毎ターン少しづつ後退を繰り返す、理想的な遅滞戦術が可能となります。
 泥濘のため、機動力を発揮できないのは独軍も同一で、戦線の切れ目を的確に突くことが不可能になっています。そのため戦線の両脇で敵を後退させ、戦闘後前進によって包囲する作戦をとります。しかし1:1の戦力比では充分な戦果が得られず、包囲に失敗する場合や包囲には成功しても肝心の直接攻撃で失敗する場面が増えていきます。
 それでも第8ターンには、ソ連軍主力たる第6軍の司令部の包囲殲滅に成功します。しかし残り1ターンではどうすることもできず、主戦線はハリコフ東方へと移っていきます。
 ハリコフ東方では、第69軍と西方から引き抜かれた第3戦車軍が戦線を維持しており、脆弱な独歩兵師団と国防軍装甲師団の攻撃をしのいでいます(図5)。それでも第9ターンには第3戦車軍の残存戦車軍4個のうち3個、しかも全てハリコフ東北に位置する部隊が補給切れになってしまいます。この部隊が突破されると独1個装甲師団がハリコフに到達可能となり、1/3の確率でハリコフが陥落する危機となります。
 しかし補給切れの戦車軍は土壇場で踏ん張り、結局1個軍が除去されるに留まり、ハリコフの保持が決定されました。
 最終ターン、独軍も少しでも多くのソ連軍を撃破しようと反撃を繰り返しますが、4個軍の撃破がやっとでありソ連軍の優勢のままゲームは終了しました(図6)。


図5 第8ターン 独軍の移動後のハリコフ周辺


図6 最終ターン 両軍の配置
◆ドニエプル川を渡河せよ

 今回のゲームの結果は、

独軍勝利ポイント
 都市の占領:3×5=15ポイント
 ソ連軍の撃破:19×1=19ポイント
 計:15+19=34ポイント
ソ連軍勝利ポイント
 独軍補給基地の撃破:3×10=30ポイント
 独軍撃破:13×1=13ポイント
 計:30+13=43ポイント

となり、ソ連軍の大勝利と言えるでしょう。

 このゲームに於いて、正面軍のドニエプル方面への突出は充分に有効な作戦であることが判りました。また補給状況とダイスの目によっては、ドニエプル川の渡河も充分に可能でしょう。ですが渡河に成功したからと言って、正面軍が生き残れる可能性は0に等しく、ゲーム的な作戦と言えるのではないでしょうか。ですが第3次ハリコフ会戦を扱ったゲームの中には、ドニエプル方面から突破した部隊に応じて勝利点を加算するものもあり(SPI社「南方軍集団」中の「星作戦」)案外共通する作戦かも知れません。
 これに対する独軍の作戦は厳しいものがあります。独軍はゲーム中盤まで攻撃のイニシアチブをソ連に奪われっぱなしです。そのためソ連軍の出方次第で部隊配置が大きく異なってしまいます。その中で有効そうなものは、東方からの援軍全てをもって、ハリコフに強襲をかけることでしょうか。部隊が充分であれば、西方は防御中心で凌ぎ、東方からの反撃でソ連軍をサンドイッチにするというのが唯一の勝機と思えるのです。

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