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リュミエールはセイランを伴ってベッドに腰を掛けると、その唇をセイランの形のいい耳に寄せ、その耳朶に軽く口づけてから軽く噛んだ。
「んっ……」
セイランが小さい吐息を漏らす。リュミエールは微笑んで、その耳の奥のほうに舌を伸ばした。セイランの外耳でリュミエールのその器用な舌が蠢く。
「はっ……あああっ」
「お静かに…ここは壁が薄いので、全部聞こえてしまいます。……声を出さないで。」
リュミエールは低声でそう言うと、セイランの襟元から手を差し入れ、首筋から鎖骨、肩をなぞって、さらに胸の突起に触れる。
「ん……んんんっ…」
セイランは歯を食いしばって、喘ぎをこらえている。
「声の出ないように、何かしましょうか?」
セイランは頬を赤く染めて、こくりと頷いた。
リュミエールはセイランの口にハンカチを詰めてから、荷物から淡い色のチーフを取り出して細く纏め、猿轡にした。
「さあ、これでいいでしょう。ああ……もう、こんなになって…」
リュミエールはセイランの服を脱がせにかかる。セイランの白い肌はこれから起こることへの期待感からかピンクに染まり、既にその中心も充溢し始めている。リュミエールの右手は胸の突起から徐々に下に滑って行き、ゆっくりと下腹部まで達していく。
「んー、んふっ、んんんっ」
セイランは耐え切れず、激しく身を捩る。
「まだですよ、セイラン。これくらいのことを我慢できないようでは、この先どうするのですか?」
リュミエールはその舌で、セイランのペニスの先を嬲るように舐める。そして右手はもっとうしろの既に濡れ始めた蕾を、円を書くようになぞった。
「セイラン、わかりますか?あなたのここはもう濡れています。まるで、女の子のようですね。」
「んーーーん…っ」
セイランは首を激しく振り、真っ赤に頬を染めた。その口にある猿轡はもう唾液でぐっしょり濡れている。リュミエールはセイランの芯を口に咥える。それは踊るようにびくびくと震えた。
「んんん――っ!」
リュミエールの口の中で、セイランが弾けた。リュミエールは口を離すとその白い液体をごくりと飲み込んだ。
「ふふ。もう達ってしまったんですか?こんなに早くては困りますね。ではこうして差し上げましょう。」
リュミエールは小さな紐を取り出すと、セイランのペニスの根元を軽く縛る。
「さあ、これでいい。ああ、もうここがこんなに欲しがっている……。わかりますかセイラン?ほら、中もこんなに熱くなって……ふふ。」
「ふっ、んふっ――っ!」
リュミエールの指がセイランの中で踊る。セイランは必死でシーツを握り締め、腰を捩じらせる。リュミエールは指を抜き取り、セイランの足を担ぎ上げるように持ち上げ、既に怒張した自分のものをセイランのひくひく動く下の口にあてがい、そのまま一気に貫いた。
「んんん――――っっっ!!」
セイランの細い腰が弓のように撓る。美しい形だ。リュミエールはそれを見て、体の芯がたまらなく熱くなるのを感じた。そして、セイランの両足を肩まで担ぎ上げ、さらに深く勢いをつけて押し入る。
「ふっ――――――――んんっっ!」
セイランは体をがくがくと震わせながら、声にならない叫びを上げる。
「セイラン、さあ、手を…。」
リュミエールは手を伸ばし、セイランの手を取った。そして、挿入したままその手を引いて体を引き上げる。セイランは足をリュミエールの腰に回し、腕で首にしがみついて、呻き声を上げながら、精一杯腰を揺らした。セイランの頬を大粒の涙が伝う。
二人の体の間で、熱い奔流を堰き止められたセイランのペニスが、びくびくと痙攣した。
「んんっ!ふっんんっ!」
セイランの首が大きく仰け反る。猿轡の布は溢れる唾液を吸い込みきれず、布の端から雫がぼたぼた落ちた。
リュミエールはそのまま大きくセイランを揺さぶる。結合部分がぐちゅぐちゅと淫靡な音を立てているのが、一層二人の気分を昂揚させて行く。
「……っ…セイランっ…あ、愛して…います…っ」
セイランの体が美しいアーチを描く。ペニスが解放を求めて痙攣を繰り返す。リュミエールはセイランの中の自分のものが解放寸前になったのを認めて、セイランの根元に結んだ細い紐を解いた。
「んん―――――――――っ!!」
「ああっ!」
二人はまったく同時に達した。リュミエールは力なく崩れ落ちたセイランの体に覆い被さり、片手でセイランを抱きしめ、片手で猿轡を外した。
「あ……ああ…リュミ…エールさまっああっ…」
「セイラン…私の愛しいセイラン…」
「ああ…まだ……抜かないでっ。繋がったままにしてっ…」
セイランの肉襞はまだ収縮を繰り返し、中に収まったままのリュミエールのペニスに吸い付くように蠢いている。
「ああ……あなたの中が…とても……熱いですよ、セイラン」
「…僕の中にいるのは…リュミエールさまなんだね…あいつらじゃ…ないんだね…っ」
「そうですよ、セイラン。私の、可愛いひと。」
リュミエールは一度は放出によって萎えたそれが、再び勃起し始めたのを知った。そして繋がったままのセイランの片足を持ち上げ、大きく返して、背中を向けさせた。
「う……」
セイランが呻くと、リュミエールはセイランの口に指を差し入れた。セイランは、その指をくちゅくちゅと、音を立ててしゃぶり始めた。リュミエールはセイランを四つん這いにさせ、空いているほうの手でセイランのペニスを握り、ゆるゆると愛撫をする。
「ふ……ん……はっ……んんっ」
セイランはうっとりとした様子で指をしゃぶり続けながら、腰を揺らし始める。リュミエールの腰の動きはゆっくりで、セイランをひどく焦らした。
「ん……もっと……ぉ…」
リュミエールは、今度は何も言わない。いつもあれほど言葉でセイランを嬲り続ける彼が、何故かなにも言わずに、ただ行為だけを繰り返す。
「い……いい…っ」
相変わらず淫靡な湿った音をさせながら、セイランのアヌスから溢れる白濁した液体が、太股を伝い、シーツにいくつも染みを作っていく。
「は……ぁ…っ……んぅ…」
セイランの中でリュミエールのものは更に体積を増して行く。ゆっくりと動くリュミエールに焦らされながら揺れるセイランの腰は、まるで優雅でエロティックな異国の踊り子のようだ。
「……ん……っっ…」
リュミエールがなにも言わないせいか、セイランも時々喘ぎ声を漏らす他にはなにも言わなくなった。
今、部屋の中では、安物のベッドのスプリングが軋む音と、二人の荒い息と小さな吐息、そして結合部分から漏れる湿った音以外にはなにも聞こえない。
セイランの表情が次第に、この上なく恍惚とした、至福の表情になって行く。
セイランはベッドの柵を握り締め、胸を反らして腰を突き出し、ゆるゆると、まるで波間に漂う人魚のようにゆっくりと揺れる。
真後ろからその優雅な舞踊を見つめながら、リュミエールの美しい顔も恍惚とした微笑を帯びてくる。
リュミエールは堪らずセイランのその背中を抱きしめ、挿入したままセイランを膝の上に乗せる。右手でセイランの乳首を、左手でペニスを玩ぶ。
ただ吐息だけを漏らしながら、美しい二人の人魚は青い海の波間で揺れつづけた。
いつもは性急に、昇りつめることばかりを考えていたセイランは、このむず痒いような、ゆっくりと流れる至福の時間を、新鮮な気持ちで味わっていた。
「あ……っ…んん……ん…」
小さく開けた口から何条もの銀の糸を零しつつ、セイランはゆっくりと、確実に昇り詰めてゆく。そしてついにリュミエールの手の中でその熱を放出して、セイランはそのまま眠るように意識を手放して行った。
リュミエールは無言のまま、ぐったりとしたセイランを揺らしながら口づける。そして自分も達すると、ぐぶりと音を立てて彼自身を抜き取り、セイランを抱きかかえて、耳元で優しく囁いた。
「愛しています。たとえ、何度別れても、私はあなたを探し出します。きっと…」
続く