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「あなたの趣味は理解できませんね、キーファー。確かに光の守護聖は美しいですけれど……今のあなたと同じ姿をしてますが、気品が違いますね…ですが、あのように大きな男を狙うと言うのは、あまり効率的とはいえないと思うのですけれどね。」
「黙って聞いていれば、好き勝手な事を言ってますね、ユージィン。まあいい。確かにこの坊やも美しいですがね。ただ、あまり手慣れていそうなのは、ね。」
セイランの意識が戻ると、そこはなにやら城の中の部屋のようなところであった。
そこで、ジュリアスとリュミエールの姿をした男が二人、本物より幾分下品な雰囲気の会話を交わしているようだ。
「手慣れていて、悪かったね。」
セイランは皮肉たっぷりの口調でそう言った。
「おや、お目覚めかね。孤高の芸術家くん。」
ジュリアスの姿をしたその男の目にはぎらぎらとした獣じみた光が宿っている。セイランは改めてジュリアスの持つ体質が、「自信」ではなく「誇り」なのだということを思い知った気がする。
(同じ姿で、こうも違って見えるものか。)
セイランはそれから改めて、自分の恋人であるリュミエールの姿をした男の方を見てみた。こちらはジュリアスほどの違いはない。今聞いた限りでは口調も似ているし、あの柔らかな微笑こそないが、静かな雰囲気は同じかもしれない。
だが何かが決定的に違う。セイランはそれが何かわからなかった。守護聖とそうでない人の違いかもしれないな、ととりあえず納得することにしたが。
「ところで、僕は何で裸なのかな?」
なるほど、セイランは大きなベッドに全裸で、両腕を後ろ手に束ねられた姿で寝かされていた。
「クックック。それはもちろん、必要がないからでしょうね。」
ものすごく厭なやつだ、とセイランは思った。吐き気がしそうだ。
「光の守護聖殿も、お綺麗で、ご立派で、まあ、犯し甲斐のある方でしたけれど、あなたはまるで違う魅力をお持ちだ。」
(犯し甲斐、だって?ジュリアス様を?犯したって言うのか?この男が?)
「あんた、ジュリアスさまを……?」
「クックック。もうだいぶ前に、ね。ずいぶん、楽しかったですよ。まるでキツくって、だいぶ裂けてしまいましたけれどね。」
セイランは呆然とした。
(こんな下卑た男にあのジュリアスさまが凌辱されたと言うのか?……まさか、ジュリアスさまの様子ががおかしかったのはこの男のせい、か?)
「キーファー。余計なことを言わないようにしてください。まったく、品のない。」
(ふうん。このリュミエールさまの偽者は、いくらかましのようだね。)
とセイランは少しホッとする。……いや、そんなことでホッとしてもしかたがないのだが。
「まあ、僕も同感だけど。けど、この仕打ちはひどいんじゃないの?こんなことしなくても僕は逃げないよ。僕を抱こうっていうんだろう?ふふ。そっちの偽ジュリアスさまはちょっと嫌だけど、あなたなら……ちょっと興味あるな。」
セイランは偽リュミエールに向かってこんなことを言ってみたけれど、もちろんこんな素性も知れない偽守護聖に抱かれるのはぞっとしない。ただ、こんなわけのわからない連中の前で裸で晒し者にされるのは不快極まりなかったからであった。
「そうはいきませんよ。縛るのは脱走防止ではなく、この人たちの趣味、ですからね。」
また偽ジュリアスが口を挟む。うるさい男だ。本当にむかつく。
(待てよ、なんだって?……この人…たち?)
「でも御希望通り、まずは、どうです?ユージィン。この子の恋人の水の守護聖の姿を借りたあなたから。」
セイランは反射的にユージィンと呼ばれた偽守護聖を見た。
彼は無表情にセイランの髪を掴むと自分のズボンの前を開け、自分のものを取り出すと、セイランの口に強引にそれを押し込んだ。
「むぐ…っ!う…ん、んんっ……ふ…っ」
セイランは身を捩ってみたが、無駄なことだった。それを合図に偽ジュリアスがセイランのペニスを掴むとぐいと引っ張った。
「んんんっ!!ふっんんっ!」
セイランは飛びあがらんばかりに驚いた。
「前戯なしが好きなのでね。悪く思わないでくださいよ。」
セイランの中にいきなり太いものが捩じ込まれる。
「んん――――――――っ!!」
いくら慣れているセイランとはいえ、前戯もなしに突っ込まれたのではたまらない。肉の裂かれるような痛みに耐えきれず、思わず口にしているものに歯を立ててしまった。
ユージィンはセイランの口から自分のものを引き抜き、掴んでいた髪を力いっぱい引き上げる。無理やり伸ばされた首と引っ張られた髪の付け根が悲鳴を上げた。
「うああああっ!!!」
構わずユージィンは今度はセイランの頭をベッドの上に叩きつけた。
「なんだ、ユージィン。俺に代わってくれるのか?」
その声から察するところ、オスカーの偽者らしい。セイランはくらくらする頭を上げて、思わず声の主の顔を見た。
「ゲルハルト。いいですよ、どうぞご随意に。」
「ほう。こりゃあ上玉だ。おい、別嬪さん、今度はオレのをしゃぶってくれ。」
そういってその男はセイランの顎を反らせ、その口の中に顎の外れそうなほどの逸物を突っ込んだ。
「ほら、舌を使ってくれよ。」
そんなことを言われても口の中が一杯で舌を動かす隙間もない。それどころか喉の奥まで突っ込まれて息が止まりそうな気がした。
相変わらず腰のあたりでは、キーファーがいやらしい音を立てながらセイランの中で激しく動いている。
下半身の痛みと、息苦しさで、気が遠くなりそうだ。確かに体は反応して、ペニスは少し勃起して来たようだが、快感はまるで感じられない。代わりに酷い吐き気にも似た、言いようのない不快感がセイランを襲う。
「そろそろ、出しますよ。」
そう言ってキーファーは最後の突きを入れると、低く呻き、セイランの中に射精した。
「うっ、うう、ぐふっ!」
自分の中に流れ込む生暖かい精液の感触。いつもは決して嫌いなものではなかったが、今は嫌悪感しか感じられない。セイランは腹の中からこみ上げるものが我慢できなくなり、胃の中から逆流した胃液の味が、いっそう吐き気を助長する。
「うわ、何だこいつ!」
ゲルハルトが異常に気付いてセイランの口から自分のものを引き抜く。
セイランはついに嘔吐した。
「きったねえな。こいつ吐きやがった。」
「ごほっ、ごほっ、けほっ!」
むせ返るセイランの小ぶりな頭を、ゲルハルトはものすごい力でわしづかみにし、吐瀉物で汚れたシーツの上に捻じ伏せた。そして、キーファーのものが抜かれたばかりのアヌスに、その太いものを押し挿れた。
「やっ、やだっ…あ…やめてっ…っ」
セイランのそこがみしみしと音を立ててこじ開けられる。まるで心臓がそこに移ったように酷く疼いた。
「何だ、あまり感じてねーな。」
この声はランディさまの偽者だな、と朦朧とした意識の中で思う。
「おい、ジョバンニ。こういうのはおまえのほうが得意だろう?やってやんな。俺は口のほうがいいぜ。」
そう言うと、三度セイランの口にペニスが押し入って来た。
「今度、吐いたり噛んだりしやがったらぶっ殺すからな。気ぃ入れてしゃぶれよ!」
今度は先ほどよりだいぶ細いので、何とかセイランは言われたとおりにすることができた。だが吐き気はおさまらず、脂汗がこめかみを伝う。
そのとき、セイランのペニスにねっとりとしたものが巻きついたような気がした。セイランが必死に顎を引いて見てみると、さらさらの金の髪の少年が彼のものをその舌で嬲っている。
今までは不快感しか感じていなかったセイランは、まるで蛇のように絡み付く舌の感触についに快感のようなものを感じ、声を漏らし始めた。
「は、んん…ふっ、んっ、んうっ」
「おっ、さすがじゃん、ジョバンニ。こいつ、感じ始めたぞ。はは、腰が揺れてきたぜ。やっぱりこいつ、噂どおりの淫乱なんだな。」
セイランは今までの不快感が快感に変わり、半端でなく感じていた。急に、体が熱くなって来る。
「ふっ、んっ、んん、んっ」
「へえ、すっげえぞこいつ。なんか、声と顔だけでも達けそうだぜ。」
それを聞いて、マルセルの姿をしながら狡猾そうな笑みを浮かべたジョバンニがセイランから口を離し、にやりと笑った。
「うふふっ、ウォルター、僕の舌技でイケないヤツなんかいないさ。ね、もうこんなに欲しがってる。」
セイランは昇りつめる直前で止められて、変になりそうだった。
「んっ…んん…んふっ…っ」
腰が、ゲルハルトを咥えたまま上下に揺れる。行き場を失ったペニスがぴくぴくと震えた。
「うふふ。どうして欲しいの?」
ジョバンニが大きな瞳をぎらぎらと光らせながら悪戯っぽく、そう尋ねた。
「ほら、君が言わなくても、ここは欲しいって言ってる。でも、君が言わなきゃやってあげないよ。ね。」
そう言ってジョバンニは指先でペニスの先端をくりくりと嬲る。
セイランは気が狂いそうだった。酷い不快感はまだ残っているのに、それとは別にものすごい快感がセイランを苛んだ。だが、僅かに残った理性がその快感を受け入れるのを拒もうとしている。
「しょうがないなあ。じゃあ、君にはこれをあげる。あ、そーか。ウォルターがイッてからの方がいいよね。」
「あ、ああ…あ…」
その淫靡な表情と喘ぎも手伝って、ウォルターとゲルハルトが上と下でほほ同時に達した。
ほとんど呑みこむ気力もなくしたセイランの開いた口と結合部分から、白濁した液体が溢れ出る。両方からペニスが抜かれ、セイランは虚しく腰を捩る。どうして…。
(こんなにいやなのに、どうして…欲しいなんて思うんだろう。)
「リュミ……エール、さまっ」
セイランがたまらず呟く……と、ひゅん、という空気のなる音と共に体に電撃が走った。
「ああ―――――――っ!ひっ!あ、あっっっ!」
一瞬にして裂くような痛みと共に、なにかが体を掠め、それと同時にセイランは達した。
「へえ、すごいなあ。鞭は初めてじゃないの?それでイケるなんて、すっごいマゾヒストだね、君って。サイコーだよ。もっと遊んであげるからね。ね、ウォルター、あれ、試してみようよ。」
続く